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Posted by 一二三 - 2011.11.20,Sun

こんばんは!一二三です☆

いやぁ~;毎度お待たせしてすみません;

明日は「魔戒指南#4」のレビューUPするからね!


さて今回は長編小説の5話です。
長かったこの物語にもようやく終わりが見えてきました~ww

鋼牙とカオルにぜひ注目してもらえたら、と思います!φ(о´ω`о)
あと芽衣子もねw


お付き合い頂ける方はぜひ!

「つづき」クリックで 小説 『Gott ist tot, Gott bleibt tot..』へどうぞ。

よろしくお願いします☆







「・・・お父さん、今日は一緒に公園へ行く約束でしょ?」
 
幼い娘が顔を俯けて私を責めた。
 
「芽衣子・・。」
 
「芽衣子、お父様はとても大切なお仕事があるのよ。
 我儘を言って困らせてはダメ。」
 
「また今度一緒に行こう。」
 
妻の言葉を助け舟にして、私は精一杯父親らしいことを言ったつもりだった。
しかし娘は怒って、その残酷な瞳で私を射抜く。
 
「いつもまた今度!今度っていつ?
 お父さんなんか大っ嫌い!!」
 
走って自分の部屋に閉じこもってしまった。
その姿は幼いころの私のようだ。
あの子の気持ちはよく分かる・・・・私にも憶えがあるから。
 
「・・・父のようにはなりたくなかったが、結局私も同じだな・・・。」
 
「・・・きっと帰る頃には機嫌も直っていますよ。
 それよりあなた・・・芽衣子やっぱりよく転ぶのよ。
 ねぇ、あなたも一度いっしょにお医者様に説明を受けに行きましょうよ。
 一度でいいから・・・!」
 
「子供はよく転ぶものだろう?
 心配ないさ。」
 
「でも、あなた・・!
 もし病気や障害だったら・・・」
 
「君は少し神経質になり過ぎじゃないか?
 オブジェの浄化で忙しいんだ、話なら帰ってからにしてくれ。」
 
「・・・わかりました。
 お気をつけて。」
 

――・・・ 


妻が死んだのはそれからしばらくのことだった。
 
1年経って、ようやく妻の遺品を整理しようと私は彼女の引き出しを開けた。
ファイルに綴じられた大量の病院の領収証と娘の診断記録の束を見つけた時、
 
・・・私は魔戒騎士をやめた。
 
 
その時やっと、私は父親になれた気がしたのだ。
 
 
 
 
 
Gott ist tot, Gott bleibt tot. Ⅴ.
 
 
 
 
 
「・・・おとうさん・・・。」
 
怯えた表情で、少女は父親を見つめた。
父親はできるだけ娘を怖がらせないよう優しく、そして目線を合わせて語る。
 
 
「め、芽衣子・・・どうしたんだい?
 ああ、お腹が空いたんだね。
 もう少し待っていなさい・・・・、じきに3つ目のバッグがいっぱいになるよ。」
 
占い師の言葉にカオルはハッとして鋼牙を見つめた。
鋼牙に繋がれている点滴台のバッグはあと100ccほどで満杯になる。
 
ぞっとするほどの深紅。
 
霞む視界の中、数度瞬きを繰り返しながら意識を飛ばさないようにしている鋼牙の姿に、カオルの胸は引き裂かれるほど傷んだ。
 
「・・やめ・・て・・・」
 
潰れた喉から絞り出たのは掠れるような声だけ。
 
「お願い・・・!
 鋼牙を助けて・・・。
 私はどうなってもいいの、だから助けてよ!!」
 
「カ、オル・・・!」
 
鋼牙は咎めるように私を呼んだ。
 
目の前の卑怯者に懇願する姿・・・彼には愚劣に見えただろうか?
 
でももういいの。
どんなに情けなくっても、陳腐に聞こえても、恥も外聞も無くても。
私はそれほどまでに追い詰められていた。
 
縛られていて良かった、と思う・・・。
 
もし拘束されてなかったら、きっと土下座だってしたから。
 
 
目の前で鋼牙が弱っていく・・・。
占い師によってメスで切り裂かれた彼の掌から、血が点々と落ちていくのを見せつけられる。
 
もう見たくない。もう耐えられない。
 
この痛みに比べたら・・・。
私のちっぽけなプライドなんて捨てられる。
 
でもそれは、占い師にとっても脆く容易く打ち砕けてしまうくらい本当に小さなプライドだった。
 
「・・・思い上がりも甚だしい。
 あなたの命に黄金騎士と引き換えられるほどの価値などありません。
 私は何のためらいもなく君の頸動脈をかき切ることが出来る。 
 でも、そうしないのは足元を横切るアリをあなたたちが殺さないのと同じことですよ。」
 
価値が無い。
私の命には、奪うほどの価値もない。
 
そうはっきりと言われた。
 
彼にとって、この世で価値のあるものは、きっと芽衣子ちゃんだけなんだ・・・。
 
ねぇ・・それで本当にいいの?
それが幸せなの?
 
「お願い・・・です・・・っ!
 もし、これが本当に芽衣子ちゃんのためになると思ってやってるなら・・。
 ・・・お願い、思い直して・・・」
 
最後の望みを口にした。
でもきっとそれすらも彼には届かないのだろう。
 
私は甘かった。
 
占い師さんが見せた、あのどこか悲しみの混ざる微笑みを・・その奥にあるものを信じたかった。
 
だからここに来た。
・・・けれど、ここには絶望と狂気しかない。
望むものは何一つなかった。
希望なんてどこにもない。
 
芽衣子ちゃんが車いすを鋼牙に寄せる。
・・・血を飲むために。
 
なんで・・・。
どうして私は何もできないの?
 
結局、鋼牙を危険に晒しただけ・・・。
飛び込まなくて良いはずの罠に飛び込ませてしまった。
 
全部私のせい・・・!
 
正面でしばりつけられている鋼牙を見る。
彼の瞳をじっと見返しながら、私は心の内で叫ぶように謝った。
 
ごめんね、痛いよね・・・辛いよね・・!
ごめんなさい、ごめんなさい。
 
憎んでいいよ。
・・・許してもらおうなんて思ってない・・・。
 
せめて、私の命が引き換えになれれば良かったけど・・・  駄目みたい。
ごめんね、鋼牙・・・ごめんね・・・
 
 

「カオル。
 俺は誰だ、言ってみろ。」
 
ギラリと鋭い目で鋼牙は私を睨んだ。
 

「・・・?
ついに気がふれたのかい、鋼牙君。」
 
不意に口を開いた鋼牙を占い師があざ笑う。
 
私が心で訴えたことは、きっと鋼牙に伝わってる。
あれはその上での返答・・・。
 
なぜ?なぜそんなことを聞くの?
 
鋼牙の強い瞳に気おされて、疑問を抱えながら私は乾いた唇で彼の名を呟く。
 
「冴島・・・鋼牙。
 ガロ、黄金騎士・・・最強の、魔戒騎士。」
 
 
「そうだ。
 お前はそれの女だろう?
 情けない真似をするな・・・!!」

 
「 ―! 」
 
鋭く響いた喝破は、私の前に広がる暗雲を一気に追い払う光。
 
 
一喝とともに鋼牙の右手を縛っていた手錠が外れる・・・!
 
そこにいたのは・・・
 
 
「芽衣子・・!!」
 
占い師は目を見開いて驚愕の声を上げた。
 
鋼牙は自由になった右手で、即座に右足に手を伸ばす。
皮のブーツに隠していた短剣を取り出すと、あっという間に両足と左手を拘束していた金具を外した。
 
 
「馬鹿な・・・!芽衣子っ・・・!」
 
「・・・おとう、さん・・・。」
 
娘の裏切りに戦慄く占い師には、鋼牙を再び押さえつける余裕などない。
 
鋼牙は一瞬グラリと上体を崩すが、すぐに自分の頸動脈に刺さっているドレーンに手をかけた。
 引き抜けば大量出血でそのままショック死の可能性もある。
 
 
鋼牙は一瞬ためらうが、ギュッと目を瞑り覚悟を決めた。
 
ドレーンを抜かなければどちらにせよ身動きが取れない。
なら、いっそ自分の丈夫さに賭けよう。
 
深く息を吸って、ほんの一時呼吸を止める。
 
鋼牙がグッとドレーンを片手で引っ掴んだ。
 
「っ・・・ぁあああ゛!!」
 
うめき声とともに鋼牙がドレーンを引き抜いた瞬間、赤い線が床に飛び散るのを見て、カオルは思わず目を閉じる。
 
瞼の裏に、さっき私を怒鳴った鋼牙の強い目が浮かんだ。
 
・・・違う。
目を背けることは許されない。
私は見なければ。
 
私は鋼牙の恋人なのだから。
 
これが魔戒騎士と付き合っていくことの現実。
鋼牙と一緒に居続けるために見なければいけない現実なんだ。
 
それは穢く、おぞましく、血と肉、痛みと叫び。
 
そしてほんのわずかな希望。
 
薄っすらと瞼を上げると、涙で揺れる視界に確かに希望の姿が見えた。
 
鋼牙は左手で首を直接圧迫しながら、側の机に寄りかかってカオルの元へ歩み寄る。
 
 
その鬼気迫る様子に、占い師は圧倒され恐れを抱いた。
 
致死量に近い血液を抜いた。
歩けるはずはないのに・・・・!
 
今、冴島鋼牙は御月カオルへの想いだけで歩いている。
 
 
そのたどたどしい歩みは、占い師の脳裏にかつての娘の姿を思い起こさせた。
まだかろうじて歩けた頃、手すりに掴まって懸命に足を前に出していた芽衣子を。
私に向かって一歩一歩、歩む姿。
 
今になって思えば・・・、私は“あの頃”を取り戻したかったのだ。
 
芽依子が再び歩けるようになれば、あの頃に戻れると思った。
 
 
・・・何のことはない。
私はその機会を永遠に失ったのだ。
 
私自身の手によって・・・。
 
 

「・・・っ、カオル!」
 
「鋼牙!」
 
 
カオルが縛り付けられている椅子に、鋼牙は倒れこむようにたどり着く。
 
真っ白な鋼牙のコートは、頸動脈から溢れた血で肩口の右半分が赤く染まっていた。
 
ひどい・・・!
 
それでも、カオルは今度こそ目を閉じずに鋼牙をじっと見つめた。
ほんのわずかな彼の姿も見逃さないように。
 
カオルの腕を縛っている縄を切りながら、鋼牙は語りかける。
 
「カオル ・・・っ
お前は信じるためにここに来たんだろう!
俺にはお前が何故そうするのか理解できない。
やはり奴らは許せないし、ホラーは憎い・・!」
 
 
「・・・こうが・・。」
 
私達を隔てる壁はあまりにも決定的に思える。
それは私がただの人間で、鋼牙が魔戒騎士だから・・・。
 
私はただの人間だから、ちっぽけで弱いあの人達の気持ちがわかる。
 
弱いあの親子が、人間らしい・・・と思う。
 
こんな目に遭ったのに。
たくさんの人を傷つけたのに。
あなたに酷いことをしたのに・・・。
 
それでも私はまだあの人達の心を信じようとしている。
きっと悔い改めてくれるなんて、馬鹿なことを信じてる。
 
いくら優しい鋼牙でも、いい加減愛想が尽きたでしょ・・?
だからもう・・・

 
「だが俺はお前を信じる・・・!
 カオルの信じたものを、俺も信じるように努力する。
 だから、俺を信じてくれ!」
 
 
 !

・・・やっとわかったよ。
 
なぜあなたがこんなにも強いのか。
なぜあなたが絶対負けないのか。
なぜこんなにも優しくなれるのか。
 
「うんっ・・うん、うん!!」
 
 
それはあなたが、

 
自分の弱さを知ってるからなんだね・・・。
 
 
 

鋼牙が私をつないでいた縄を全部切ってくれた。
 
「ザルバと魔戒剣は、あの娘の部屋にある」と鋼牙が告げる。
手錠のカギを外してくれた時、芽衣子が教えてくれた、と・・・。
 
崩れる彼の身体を支えながら、私達は占い師さんの横をすり抜けて扉へ向った。
 
 
私はちらりと芽衣子ちゃんを見る。
 
どうして鋼牙を助けてくれたの?
どうしてお父さんに歯向かったの?
 
 
「・・・お姉ちゃん、いいから行って。
 お父さんなら芽衣子が見張ってるから大丈夫。
 絵・・・見せてくれたお礼♪」
 
少女は頬を涙で濡らしながら、にこっと笑った。
 
どうして・・・この子がホラーなんだろう。
どうして、難病に冒されなきゃならなかったの?
 
芽衣子ちゃんが病気じゃなかったら、占い師さんだって・・・魔戒騎士として人々を守るはずだったのに・・・。
 
 
おかしいよ。
 
 





 
To be continued・・・
Ⅵ.へ→ 

 
今回の長編のタイトル『Gott ist tot, Gott bleibt tot.』という言葉は、ご存じ方も多いかと思いますが、ドイツの哲学者ニーチェ著の「ツァラトゥストラはかく語りき」より引用しました。
個人的には皮肉を込めてタイトルにさせていただいたので
最近、書店でニーチェが人気なのを見て少々複雑な一二三であります;
 
大切なのは、やっぱり神様や哲学者の教えをすべて信じるってことではなく、自分で選んで信じることだと思うんですよ。
自分がどうありたいか、どうしたいのか、が大切だと思います。
 
何を信じるか、ってことに関してだけはすべての人は自由で平等だと思う。
 
というようなことをw要は小説の中でお伝えできれば良かったんですが;苦笑
「一二三!この未熟者!」( ゚д゚)ハッ!
と自分で気づいたところで、今回はフェードアウトします!!ww笑
 
 
では次回もおたのしみに☆(たぶんあと2話で終わります?w)

拍手[33回]

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Comments
なな様、ドキドキありがとうです!
拍手メッセージ嬉しいです、いつもありがとうございますv

そうでなんですよ~~あと2、3話で終わりですね。(←増えとる増えとるw)
鋼牙の全力がちゃんとカオルとあの二人に届くように一二三もラストスパート頑張りたいと思います。

お楽しみに!!

Posted by 一二三(管理人)です - 2011.11.29,Tue 20:46:14 / Edit
龍鈴様、今回もご感想ありがとうございます!
とっても詳しいご感想いただけて光栄です、毎回!w
本当にありがたいことだな~と感謝しています。


「鋼牙の強さが何から来るのか、カオルだからという意味ではなく、カオルが普通の人間だからなのかな?という気がしました。」
>そうですね、一二三もそう思います。
 カオルは普通の人間だからこそ、鋼牙には無い世界観を持っている。
 個人的にはそこに重きを置いている、という感じです。

「俺を信じろ」って鋼牙よく言いますよねw決め台詞だなぁ~とw
確固たる自分を持ってるからこそ出てくる言葉だと思います。
こういうこと言える自信がない自分が恥ずかしい(;´Д`)

鋼牙を見習って精進します!
次回もよろしくお願いします。
Posted by 一二三(管理人)です - 2011.11.29,Tue 20:46:45 / Edit
青佐様、ご感想大変助かりますw
拍手メッセージ多謝です!☆
まだまだ課題は多いですが、ラストまでお付き合いくださると大変嬉しく思いますv

鋼カオイラスト描いてくださいよ~~!w
もうドンドン描くべきですよ~!(*´∀`*)
ぜひ見たいわーーーv

谷山浩子さんは暗いか変な曲ばっかりw聞いてますwwなぜか(笑)
でも好きなんですよ!かなり。彼女の世界観がw←(しかし身近な友人には理解されなかった!オーマイガ)
「ハートのジャックが有罪であることの証明」とか「素晴らしき紅マグロの世界」(曲名)とか好きなんですけど・・・!

わ~たしーのこの道はマグロへつづく道~~♪>(´Д`*)

・・・・しかしあまり理解されないorzチーン

「風になれ」を今度聴いてみます!今回もありがとうございましたv
曲を紹介して頂いてすっごい嬉しい&助かってますw
Posted by 一二三(管理人)です - 2011.11.29,Tue 20:47:37 / Edit
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