Posted by 一二三 - 2012.02.07,Tue
ごめんなさい!!;orz
ほんともうごめんなさい!!
後半やっとUPです。
とりあえずUPしていきます;
明日あたりにはちゃんと、お詫び文掲載しますので、お許しくださいませ。゜(゜´Д`゜)゜。
『Kokoro』-後編ーをお読みになる方は「つづき」クリックでどうぞ。
鋼牙と喧嘩した次の日の朝。
ピアノコンサートは今夜だ。
なんとか出かけるまでに鋼牙と仲直りしたい。
鋼牙は行かなくても、せめて気持ちよく「いってきます」って言えるように。
気まずさを抱えつつも、一階のダイニングへと向かう。
まずは「おはよう、昨日はごめんね」だよね。
よし・・・!
覚悟を決めて深呼吸すると、ダイニングの扉を開けて元気よく挨拶した。
「おはようー!」
バタンと扉を開けると、ダイニングにはゴンザさんしかいない。
「おはようございます、カオル様。」
「あれ?鋼牙は?
まだ寝てるの?」
いつもなら私より先に食卓についていて、コーヒーをすすっているのに。
「鋼牙様ならもうお出かけになられましたよ。」
「え・・・ど、どうして?」
「さぁ、何かお急ぎのようでしたが・・・。」
・・・もしかして私のこと避けて・・・?
そんな・・・。
どうしよう、謝るタイミング・・・なくしちゃった。
なんとなく、じっとしていられなくて街中をブラブラ歩いてみる。
でも4日前のような偶然は起こらなくて、鋼牙の姿はまるで見かけなかった。
会いたいよ、鋼牙・・・。
会って謝りたい。
本当は鋼牙を見つけるまで屋敷には戻りたくなかったけれど、コンサートの開場時間を考えるとずっとこうしてもいられない。
出掛ける準備だってしてないし・・・。
帰り際に花屋さんに寄って華やかなブーケを作ってもらった。
ピアニストの彼に贈る花束を。
出来上がったブーケを抱えてため息交じりに来た道を引き返した。
「・・・ただいまー・・・。」
日も暮れかかった時分に、重い足取りで冴島邸に帰り着く。
「遅い!」
・・・ ・・・・え?
「へ!?」
玄関を開けた途端聞こえた声に、私は驚いてぱっと顔を上げる。
そこには腕を組んで仁王立ちしたスーツ姿の鋼牙が立っていた!
「こっ・・鋼牙!?」
なんでスーツ??
ていうか、いつもより帰宅が早いんだけど??
きっとまだ帰ってないと思ってたのに。
頭の中に疑問符がたくさん湧いて、状況を上手く把握できない。
「まったく、俺が早く出て早く帰ってきても、お前が遅いんじゃ意味が無いだろう。
早く出かける仕度をしろ、開場までもうそんなに時間が無いぞ?」
鋼牙はしかめっ面で玄関の柱時計を眺めた。
え?え??どういうこと?
「カオル様、会場は小さなコンサートホールですが、歴史のあるホールでして。
お召しかえなさったほうがよろしいかと。」
鋼牙の後ろで、ゴンザさんが冷静に話す。
いえ、あの・・・そうじゃなくて・・!;
「鋼牙、一緒に行ってくれるの!?」
「何言ってるんだ。
指令書が来なければ行く、そういう話だっただろう?」
さも当然のように答える鋼牙に私は金魚のように口をパクパクさせた。
「だ、だだだって!;
昨日、行きたくなさそうにしてたから・・・!」
ふぅ、と鋼牙は息をつく。
「・・・まぁ、な。
とりあえず話は後だ。
すぐに着替えてこないと開演に間に合わなくても俺は知らんぞ。」
「さ、花束は預かりますので。
カオル様お早く!」
「え、あ、はい!」
私は花束をゴンザさんに渡すと、大急ぎで2階に駆け上がった。
鋼牙が・・・。
鋼牙が一緒に行ってくれる!!
でもなんでどうしてなの!?
鋼牙の気持ちの変化に驚きながらも私は嬉しさを隠せなかった。
嬉しい。
喧嘩したのに。
まともに話もしてくれないだろうと思ってたのに。
嬉しい・・・!
私はぱぱっと着替えると、化粧も手早く薄く施して、1階へと駆け降りる。
玄関ホールにはゴンザさんだけがいて、私に声をかけてくれた。
「カオル様、花束は鋼牙様に預けてございます。
門の前でお待ちですのでお早く。」
「はーい!行ってきます!」
「いってらっしゃいませ。」
丁寧に頭を下げるゴンザさんを後にして玄関を飛び出ると、門の前に黒のクラシックカーがとめてあり、右側のドアが中からバン!と開けられた。
左の運転席には鋼牙がハンドルを握っていて・・・
「えええっ!?」
鋼牙が運転するの!?
「わめいてないで早く乗れ。」
「う、うん!」
大慌てで飛び乗り、シートベルトを締める。
後部座席には私が買ってきた花束が見えた。
「・・・安全運転で行くぞ。
運転なんかあんまりしないんだからな・・・!」
アクセルをゆっくりと踏み込む鋼牙はすこし照れているように見える。
一方の私はまったく状況に頭が追いついていかない。
ハンドルを握る鋼牙を横からまじまじと見つめてしまう。
黒のスーツの袖口から見える手首がかっこいい・・・!とか妙に感動してしまった。
て、見惚れてる場合じゃないわ。
昨日喧嘩したままだった・・・。
私は居住まいを正して、慎重に口を開く。
「鋼牙、あのね・・きのう・・・」
「わるかった!」
え?
私が言う前に、鋼牙に先に言われてしまった。
「昨日はどう考えても俺が悪い。
だからお前が謝る事なんてない。」
まっすぐに前を見たまま真摯に謝る鋼牙の横顔。
それは昨夜の苛々した態度とはちがう、いつもの彼に見える。
今なら答えてくれるかも・・・。
「ねぇ・・・聞いてもいい?」
「なんだ?」
「どうして、気が変わったの?」
私の問いかけに鋼牙はグッとハンドルを握る手の力を強めた。
「・・・気が変わった、というか・・・気が付いたというか。」
「“気が付いた”?」
その時、目の前の赤信号が青に変わる。
「ここで逃げたら男じゃない・・・!」
アクセルを踏み込む鋼牙の横顔は強い意志と決意に満ちていた。
え?ええ?
逃げたら・・って何から??
聞きたかったけれど、鋼牙はこれまでにないくらい男の顔つきだったから何も言えなくなってしまった。
『男の意地』
そんな言葉がこれほど似合う横顔を私は今まで見たことが無い。
それは魔戒騎士の顔じゃなくて、冴島鋼牙という等身大の男に思えた。
ピアノコンサートにここまで気迫をもって向かう者など、他にどこをさがしてもいない気がする。
「なんかよくわかんないけど・・・;
がんばって!鋼牙!」
「あぁ、負けてたまるか!!」
謎の闘志をたぎらせて、しばし二人きりのドライブを楽しんだ。
―――・・・
コンサートホールにつくと、丁度開場したばかりのようだ。
「良かった~!
鋼牙のおかげで間に合ったよ!」
「あぁ・・・花束はコンサートが終わってから直接渡すのか?」
「うん!
“絶対、見に来てください!”って言ってたんだよね~。
なんだかワクワクする!」
「・・・・。」
カオルの言葉に鋼牙は複雑な心境だった。
他の観客がぞくぞくと座席に着く中、カオルと鋼牙も中央付近の座席をとる。
カオルは座ってすぐに受付で貰ったパンフレットを開いてみせた。
「ね、鋼牙はクラシックもよく知ってるんでしょ?
プログラムで気になるのある?」
「そうだな・・・割と有名な曲を選んでるのかお前でも知ってると思うぞ。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番『悲愴』とか・・・
ラフマニノフの『パガニーニの主題による狂詩曲』も有名だな。
・・・・『エチュード 音の絵op39-6』も弾くのか・・・。」
「“音の絵”?
わー!なんか画家として気になる!」
「・・・;たぶん、お前の想像とは違うと思う・・・。」
演奏は少しのトークをはさみながら、行われる形式だった。
最初にアナウンサーによる楽曲の説明が入り、その後登壇して弾くというもの。
5曲目に弾かれた『ラフマニノフのエチュード音の絵』は、鋼牙が推察した通り、カオルの想像と大きく異なる楽曲だった。
隣で圧倒されて、顔が硬直しているカオルに、鋼牙はやはりな・・と思う。
「に、人間って・・・すごいね・・・!;
こんなに速く指動くんだ・・・。
ていうかなんか怖い・・・;」
「あぁ・・これは“赤ずきんと狼”なんて言われる曲で、逃げ惑う幼子を追いかけているような・・・そういう曲らしい。」
「こういう曲弾くイメージ無かったから、びっくりしちゃった!
すんごいのんびりした人なんだよ~?」
「・・・このコンサートはたぶん、ある人に向けられて行われているんだ。
その人と自分をつなぐものが、“音の絵”というタイトルに近いんだろう・・・。」
「すごいね鋼牙!
クラシックも詳しいなんて・・・!
やっぱり一緒に来てもらえてよかった~!」
単純にコンサートを楽しむカオルと鋼牙は違っていた。
一方の鋼牙は自分の予想が外れていなかったことを改めて知る。
このコンサートの意味を。
「・・カオル、お前はこのコンサートが誰に向けて行われているか気にならないのか?」
「え?」
「どうしても、聴いてほしい人がいたんだ。
これはたった一人の人物に向けられたコンサートだ。
それは・・・・」
″いよいよ、最後の曲です″
鋼牙の声をさえぎるようにアナウンスが入る。
それまでの曲はすべてアナウンサーが解説をしていたのに、最後の1曲だけはピアニスト本人がマイクを持って登壇してきた。
―「最後の曲となりました。
この曲は、ある人にどうしても伝えたい想いがあって・・・僕自身が作曲したものです。
その人は、僕がまだイタリアに留学していた頃に出会った同じ日本人の女性で、彼女は画家になることを夢見ていました。」
あ・・・、とカオルは呟く。
―「彼女と出会った頃、実は僕は・・・ピアニストを諦めようと思っていたんです。
コンクールで一つも入賞できない僕は、上手い人ばかりのイタリアで打ちのめされていました。
夢を諦めて日本に逃げ帰ろうと思っていたあの日、彼女は目をキラキラさせて・・・自分の絵にかける情熱を僕に語ってくれたんです。
そんな彼女を見て、僕ももう一度頑張ってみようと思えた。
今の僕がいるのは、彼女のおかげなんです!」
そんな・・・私、全然知らなかった・・・。
ピアニストを諦めようとしてたなんて。
―「そして、コンクールに入賞できたら・・・僕は自分の想いを彼女に告げるつもりでした・・!」
思いがけない言葉に、カオルの手が震えた。
同時に隣で聴いている鋼牙が気になって、チラリと窺うと・・・鋼牙はどこか寂しそうな目で微笑み返した。
鋼牙・・・知ってたの?
彼の気持ち・・・。
なんとなく気づいていたから・・・来たくなかったの?
―「あなたのために最後の曲を弾きます。
聞いてください・・・!」
ピアニストの彼は深々と頭を下げ、マイクをスタッフに預けると堅い表情でピアノの前に座った。
観客は物音ひとつ立てずにじっと演奏を待っている。
ふう、と彼が深呼吸する音まで聞こえて緊張がこちらにも伝わった。
そっと鍵盤に指が置かれ繊細な音色を奏で始める。
美しく・・どこか懐かしい旋律。
ここはコンサートホールなのに、イタリアの空の情景が浮かんだ。
一緒にBARでブリオッシュを食べた頃の記憶が胸に湧き上がる。
彼の奏でるシンコペーションが過ぎ去った時間を遡らせていった・・・。
私が落ち込んでいる時は励ましてくれたこと。
楽しい時は一緒に笑って・・・日本が懐かしくて一緒に泣いたりもした。
それはとても素敵な思い出で、あの頃の私を強く支えてくれていた。
輝かしい思い出とは裏腹に、奏でる想いに応えられない痛みが胸をえぐる。
懐かしく・・・そして切ない旋律に、涙がこぼれた。
ぎゅうっとスカートの布を握りこむと、鋼牙がそんな私の手に自分の手を重ねる。
「・・・こうが・・・?」
そっと彼を覗うと、鋼牙も苦しそうな表情を浮かべていた。
今の鋼牙の心境はカオルには窺い知れない。
ごめんね、鋼牙・・・。
私鈍いよね。
何にも分かってなかった。
思えば、鋼牙と出会った頃もそうだった。
あなたがどれほど私のためにその身を盾に戦ってくれていたか、まるで分かってなかった。
言葉じゃない方法で、たくさん・・たくさん伝えてくれていたのに。
あなたは助けてくれた・・・。
守ってくれた。
支えてくれた。
いつだってそばにいてくれた・・・!
だからそんな顔をしないで。
あなたは確かにイタリアにはいなかったけど。
ずっと私の傍にいてくれたよ?
鋼牙はぎゅっ、と私の指を絡めて手をつないだ。
決して離したくない、と伝えるような指の強さに想いの深さを感じる。
演奏の終わりを告げる拍手がホール中に響いた。
鳴り止まないスタンディングオベーションの中、ピアニストの彼は舞台で深くお辞儀をする。
顔を上げた彼と確かに目があった気がした。
ゆっくりと舞台袖へと消えていく彼を目で追いながら、その手が震えていることに気が付いた。
どれくらいの勇気を振り絞ってくれたんだろう。
どれくらいたくさんの想いをこめてくれたんだろう。
「・・鋼牙、ごめん・・・私行かなきゃ。」
「あぁ、・・・分かってる。」
繋いだままの手が宙に浮かんだ。
「待っていてくれる?」
「あぁ。
そのために俺は来た。」
鋼牙の言葉に背中を押されて、私は観客の隙間を縫いながら出口を目指す。
舞台裏で私を待っている彼に会うために。
人々の隙間に消えていくカオルの背を見送りながら、やはり不安をおぼえる自分に、鋼牙は嘲笑を浮かべた。
たくさんの歓声。
割れんばかりの拍手。
まるで自分の生きる世界とは別に思える。
人々の中に溶け込んでいくカオルの姿に・・・いつか自分は彼女を見失ってしまうのではないかと、そんな考えが頭をよぎった。
輝かしい世界。
輝かしい未来。
そこに自分の居場所はないだろう。
努力が、正しい成功で報われる世界。
あのピアニストのようにカオルにはそんな世界を生きてほしい。
そう願う反面、彼女の手を離せない自分がいる。
何の不自然さもなく、カオルの横に並び立つことができる青年に・・・無性に嫉妬をおぼえた。
・・・羨望ともいえるだろう。
俺には決して手の届かない場所。
魔戒騎士と人間。
そびえたつ壁をまざまざと見せつけられるたび胸が痛んだ。
本当はここへは来たくなかった。
今だって逃げ出したい。
けれどカオルが望んでくれるなら。
カオルが笑ってくれるなら。
ここで逃げ出すような情けない男にはなりたくない。
―――・・・
舞台裏へと続く扉の前で、彼は待っていた。
「かっ・・・カオルさん///」
「あ・・・あの・・・・これ・・・。」
手に持っていた花束を差し出すと、ピアニストの彼は顔を真っ赤にさせながら受け取った。
「あ、ありがとう・・・・。」
それだけ言葉を交わすと、お互い黙り込んでしまう。
どう話を切り出せばいいか分からなくて、私は目を泳がせた。
「ほっ・・・本当は!」
緊張で声を震わせた彼が、先に口火を切る。
「イタリアで・・・賞をとったら告白するつもりでした・・・///
自分に、自信が持てたら・・・と。」
「演奏・・・すごく、素敵でした。
でも・・・。
ご、ごめんなさい!」
彼の気持ちは受け止められない。
私にはただ頭を下げることしかできなかった。
「そ、その・・・私には・・・。」
「・・・ですよ、ね!」
え?
はた、と今一度彼と向き合う。
彼は昔と同じ人懐っこい笑みを浮かべてそこにいた。
「そんな気がしてたんです。
イタリアで出会った頃からずっと。
時々、何も嵌めてないはずの左の中指を触ってたでしょう?
自分では気づいてなかったかもしれないけれど、僕はピアニストのせいかよく他人の指を見るから・・・。
そのクセが出る時、カオルさんはいつもすごく幸せそうな顔をしてた。
で、たぶん・・・そういうことだろうなぁ、と。」
そうなの?
まったく自分では気づいていなかったから、私は目を丸くする。
「困らせてしまってすみません。
でもどうしても、自分に踏ん切りをつけたかったんです。
あの日、カオルさんに伝えられなかったこと・・・やっと伝えられました。」
「ごめんなさい・・・。」
再び頭を下げると、彼は気遣うように笑って頭を掻いた。
「あぁ・・・いやぁ!
もう謝らないでください。
むしろ僕はお礼を言いたいくらいで;
あの日気持ちを伝えて玉砕してたら、やっぱり僕はピアニストにはなれなかったかもしれない。
カオルさんが僕に猶予をくれたんですよ。
おかげで、こんな花束をもらえるくらい出世しました!」
そういって明朗に笑う彼の笑顔に私の心も救われる。
きっと彼は、私が自分を責めたりしないで済むように気を遣ってくれているのだろう。
あの頃も彼の笑顔が安らぎをくれた。
「私の方こそ、本当に・・・ありがとう。」
―――・・・
帰りの車の中、私は流れるネオンの景色を見つめながら鋼牙に語りかけた。
「鋼牙・・・。
待っててくれて、ありがとう。」
「・・・彼とは、話せたのか?」
「うん。
すっごく良い人だった。
ねぇ、鋼牙はコンサートどうだった?」
「・・・・。
最後の曲が・・・一番良かったな。」
鋼牙の横顔は穏やかで、ほっと息をつく。
「私も、鋼牙と一緒に聴けてよかった。
・・・・ね、妬きもち妬いたりした?」
「妬くか・・・。」
「え~~~。」
嘘つきだなぁ。
「じゃあ、なんで昨日怒ってたの?」
「別に怒ってない。」
「じゃあ、なんで私達喧嘩したんだっけ?」
問答をしている内に、冴島邸のガレージについてしまう。
駐車した後、鋼牙はエンジンを切るとシートベルトを外しハンドルの上にふぅ、と両肘をついた。
暗い車内に、フロントガラスから月明かりだけが差し込んでいる。
諦めたようにため息をついた鋼牙を、私はどこか優越感を感じながら見つめた。
会話の先に逃げ道がないことを知っている。
観念したのか、鋼牙は両肘をついたまま顔だけ私に向けて白状した。
「お前のことが好きだから。」
月明かりが瞳を反射している。
彼の頬が紅い。
私の体温も熱くなる。
狭い車内で、鋼牙の手がシートの上の私の手を摑まえた。
そのまま覆いかぶさられてキスを受ける。
掌から伝わる体温と、絡み合う舌の熱さにぼんやりと意識が霞んで、切なさに伏せた瞼が揺れた。
ゆっくりと離れた唇からこぼれる銀糸が恥ずかしくて、私は口元を覆って鋼牙を睨む。
「・・・っ////やっぱりヤキモチ妬いてたんじゃない・・。」
「不服か?」
「ちゃんと、謝って・・・キスからやり直して!///」
一緒に居られなかった時間を、全部埋め合わせてもらうから。
あなたと私の心の場所。
きっと手を伸ばせば届くはず。
そびえたつ壁だって、乗り越えられる。
私が鋼牙を好きで。
鋼牙が私を好きでいてくれるなら。
この気持ちがあればきっと大丈夫。
詳しいお話はまた改めて;
UPが遅くなり本当に申し訳ありませんでした!!(泣)
これには細くて長い事情があるのですが、何はともあれスイマセンでした!!
ピアノコンサートは今夜だ。
なんとか出かけるまでに鋼牙と仲直りしたい。
鋼牙は行かなくても、せめて気持ちよく「いってきます」って言えるように。
気まずさを抱えつつも、一階のダイニングへと向かう。
まずは「おはよう、昨日はごめんね」だよね。
よし・・・!
覚悟を決めて深呼吸すると、ダイニングの扉を開けて元気よく挨拶した。
「おはようー!」
バタンと扉を開けると、ダイニングにはゴンザさんしかいない。
「おはようございます、カオル様。」
「あれ?鋼牙は?
まだ寝てるの?」
いつもなら私より先に食卓についていて、コーヒーをすすっているのに。
「鋼牙様ならもうお出かけになられましたよ。」
「え・・・ど、どうして?」
「さぁ、何かお急ぎのようでしたが・・・。」
・・・もしかして私のこと避けて・・・?
そんな・・・。
どうしよう、謝るタイミング・・・なくしちゃった。
『 Kokoro 』―後編―
なんとなく、じっとしていられなくて街中をブラブラ歩いてみる。
でも4日前のような偶然は起こらなくて、鋼牙の姿はまるで見かけなかった。
会いたいよ、鋼牙・・・。
会って謝りたい。
本当は鋼牙を見つけるまで屋敷には戻りたくなかったけれど、コンサートの開場時間を考えるとずっとこうしてもいられない。
出掛ける準備だってしてないし・・・。
帰り際に花屋さんに寄って華やかなブーケを作ってもらった。
ピアニストの彼に贈る花束を。
出来上がったブーケを抱えてため息交じりに来た道を引き返した。
「・・・ただいまー・・・。」
日も暮れかかった時分に、重い足取りで冴島邸に帰り着く。
「遅い!」
・・・ ・・・・え?
「へ!?」
玄関を開けた途端聞こえた声に、私は驚いてぱっと顔を上げる。
そこには腕を組んで仁王立ちしたスーツ姿の鋼牙が立っていた!
「こっ・・鋼牙!?」
なんでスーツ??
ていうか、いつもより帰宅が早いんだけど??
きっとまだ帰ってないと思ってたのに。
頭の中に疑問符がたくさん湧いて、状況を上手く把握できない。
「まったく、俺が早く出て早く帰ってきても、お前が遅いんじゃ意味が無いだろう。
早く出かける仕度をしろ、開場までもうそんなに時間が無いぞ?」
鋼牙はしかめっ面で玄関の柱時計を眺めた。
え?え??どういうこと?
「カオル様、会場は小さなコンサートホールですが、歴史のあるホールでして。
お召しかえなさったほうがよろしいかと。」
鋼牙の後ろで、ゴンザさんが冷静に話す。
いえ、あの・・・そうじゃなくて・・!;
「鋼牙、一緒に行ってくれるの!?」
「何言ってるんだ。
指令書が来なければ行く、そういう話だっただろう?」
さも当然のように答える鋼牙に私は金魚のように口をパクパクさせた。
「だ、だだだって!;
昨日、行きたくなさそうにしてたから・・・!」
ふぅ、と鋼牙は息をつく。
「・・・まぁ、な。
とりあえず話は後だ。
すぐに着替えてこないと開演に間に合わなくても俺は知らんぞ。」
「さ、花束は預かりますので。
カオル様お早く!」
「え、あ、はい!」
私は花束をゴンザさんに渡すと、大急ぎで2階に駆け上がった。
鋼牙が・・・。
鋼牙が一緒に行ってくれる!!
でもなんでどうしてなの!?
鋼牙の気持ちの変化に驚きながらも私は嬉しさを隠せなかった。
嬉しい。
喧嘩したのに。
まともに話もしてくれないだろうと思ってたのに。
嬉しい・・・!
私はぱぱっと着替えると、化粧も手早く薄く施して、1階へと駆け降りる。
玄関ホールにはゴンザさんだけがいて、私に声をかけてくれた。
「カオル様、花束は鋼牙様に預けてございます。
門の前でお待ちですのでお早く。」
「はーい!行ってきます!」
「いってらっしゃいませ。」
丁寧に頭を下げるゴンザさんを後にして玄関を飛び出ると、門の前に黒のクラシックカーがとめてあり、右側のドアが中からバン!と開けられた。
左の運転席には鋼牙がハンドルを握っていて・・・
「えええっ!?」
鋼牙が運転するの!?
「わめいてないで早く乗れ。」
「う、うん!」
大慌てで飛び乗り、シートベルトを締める。
後部座席には私が買ってきた花束が見えた。
「・・・安全運転で行くぞ。
運転なんかあんまりしないんだからな・・・!」
アクセルをゆっくりと踏み込む鋼牙はすこし照れているように見える。
一方の私はまったく状況に頭が追いついていかない。
ハンドルを握る鋼牙を横からまじまじと見つめてしまう。
黒のスーツの袖口から見える手首がかっこいい・・・!とか妙に感動してしまった。
て、見惚れてる場合じゃないわ。
昨日喧嘩したままだった・・・。
私は居住まいを正して、慎重に口を開く。
「鋼牙、あのね・・きのう・・・」
「わるかった!」
え?
私が言う前に、鋼牙に先に言われてしまった。
「昨日はどう考えても俺が悪い。
だからお前が謝る事なんてない。」
まっすぐに前を見たまま真摯に謝る鋼牙の横顔。
それは昨夜の苛々した態度とはちがう、いつもの彼に見える。
今なら答えてくれるかも・・・。
「ねぇ・・・聞いてもいい?」
「なんだ?」
「どうして、気が変わったの?」
私の問いかけに鋼牙はグッとハンドルを握る手の力を強めた。
「・・・気が変わった、というか・・・気が付いたというか。」
「“気が付いた”?」
その時、目の前の赤信号が青に変わる。
「ここで逃げたら男じゃない・・・!」
アクセルを踏み込む鋼牙の横顔は強い意志と決意に満ちていた。
え?ええ?
逃げたら・・って何から??
聞きたかったけれど、鋼牙はこれまでにないくらい男の顔つきだったから何も言えなくなってしまった。
『男の意地』
そんな言葉がこれほど似合う横顔を私は今まで見たことが無い。
それは魔戒騎士の顔じゃなくて、冴島鋼牙という等身大の男に思えた。
ピアノコンサートにここまで気迫をもって向かう者など、他にどこをさがしてもいない気がする。
「なんかよくわかんないけど・・・;
がんばって!鋼牙!」
「あぁ、負けてたまるか!!」
謎の闘志をたぎらせて、しばし二人きりのドライブを楽しんだ。
―――・・・
コンサートホールにつくと、丁度開場したばかりのようだ。
「良かった~!
鋼牙のおかげで間に合ったよ!」
「あぁ・・・花束はコンサートが終わってから直接渡すのか?」
「うん!
“絶対、見に来てください!”って言ってたんだよね~。
なんだかワクワクする!」
「・・・・。」
カオルの言葉に鋼牙は複雑な心境だった。
他の観客がぞくぞくと座席に着く中、カオルと鋼牙も中央付近の座席をとる。
カオルは座ってすぐに受付で貰ったパンフレットを開いてみせた。
「ね、鋼牙はクラシックもよく知ってるんでしょ?
プログラムで気になるのある?」
「そうだな・・・割と有名な曲を選んでるのかお前でも知ってると思うぞ。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番『悲愴』とか・・・
ラフマニノフの『パガニーニの主題による狂詩曲』も有名だな。
・・・・『エチュード 音の絵op39-6』も弾くのか・・・。」
「“音の絵”?
わー!なんか画家として気になる!」
「・・・;たぶん、お前の想像とは違うと思う・・・。」
演奏は少しのトークをはさみながら、行われる形式だった。
最初にアナウンサーによる楽曲の説明が入り、その後登壇して弾くというもの。
5曲目に弾かれた『ラフマニノフのエチュード音の絵』は、鋼牙が推察した通り、カオルの想像と大きく異なる楽曲だった。
隣で圧倒されて、顔が硬直しているカオルに、鋼牙はやはりな・・と思う。
「に、人間って・・・すごいね・・・!;
こんなに速く指動くんだ・・・。
ていうかなんか怖い・・・;」
「あぁ・・これは“赤ずきんと狼”なんて言われる曲で、逃げ惑う幼子を追いかけているような・・・そういう曲らしい。」
「こういう曲弾くイメージ無かったから、びっくりしちゃった!
すんごいのんびりした人なんだよ~?」
「・・・このコンサートはたぶん、ある人に向けられて行われているんだ。
その人と自分をつなぐものが、“音の絵”というタイトルに近いんだろう・・・。」
「すごいね鋼牙!
クラシックも詳しいなんて・・・!
やっぱり一緒に来てもらえてよかった~!」
単純にコンサートを楽しむカオルと鋼牙は違っていた。
一方の鋼牙は自分の予想が外れていなかったことを改めて知る。
このコンサートの意味を。
「・・カオル、お前はこのコンサートが誰に向けて行われているか気にならないのか?」
「え?」
「どうしても、聴いてほしい人がいたんだ。
これはたった一人の人物に向けられたコンサートだ。
それは・・・・」
″いよいよ、最後の曲です″
鋼牙の声をさえぎるようにアナウンスが入る。
それまでの曲はすべてアナウンサーが解説をしていたのに、最後の1曲だけはピアニスト本人がマイクを持って登壇してきた。
―「最後の曲となりました。
この曲は、ある人にどうしても伝えたい想いがあって・・・僕自身が作曲したものです。
その人は、僕がまだイタリアに留学していた頃に出会った同じ日本人の女性で、彼女は画家になることを夢見ていました。」
あ・・・、とカオルは呟く。
―「彼女と出会った頃、実は僕は・・・ピアニストを諦めようと思っていたんです。
コンクールで一つも入賞できない僕は、上手い人ばかりのイタリアで打ちのめされていました。
夢を諦めて日本に逃げ帰ろうと思っていたあの日、彼女は目をキラキラさせて・・・自分の絵にかける情熱を僕に語ってくれたんです。
そんな彼女を見て、僕ももう一度頑張ってみようと思えた。
今の僕がいるのは、彼女のおかげなんです!」
そんな・・・私、全然知らなかった・・・。
ピアニストを諦めようとしてたなんて。
―「そして、コンクールに入賞できたら・・・僕は自分の想いを彼女に告げるつもりでした・・!」
思いがけない言葉に、カオルの手が震えた。
同時に隣で聴いている鋼牙が気になって、チラリと窺うと・・・鋼牙はどこか寂しそうな目で微笑み返した。
鋼牙・・・知ってたの?
彼の気持ち・・・。
なんとなく気づいていたから・・・来たくなかったの?
―「あなたのために最後の曲を弾きます。
聞いてください・・・!」
ピアニストの彼は深々と頭を下げ、マイクをスタッフに預けると堅い表情でピアノの前に座った。
観客は物音ひとつ立てずにじっと演奏を待っている。
ふう、と彼が深呼吸する音まで聞こえて緊張がこちらにも伝わった。
そっと鍵盤に指が置かれ繊細な音色を奏で始める。
美しく・・どこか懐かしい旋律。
ここはコンサートホールなのに、イタリアの空の情景が浮かんだ。
一緒にBARでブリオッシュを食べた頃の記憶が胸に湧き上がる。
彼の奏でるシンコペーションが過ぎ去った時間を遡らせていった・・・。
私が落ち込んでいる時は励ましてくれたこと。
楽しい時は一緒に笑って・・・日本が懐かしくて一緒に泣いたりもした。
それはとても素敵な思い出で、あの頃の私を強く支えてくれていた。
輝かしい思い出とは裏腹に、奏でる想いに応えられない痛みが胸をえぐる。
懐かしく・・・そして切ない旋律に、涙がこぼれた。
ぎゅうっとスカートの布を握りこむと、鋼牙がそんな私の手に自分の手を重ねる。
「・・・こうが・・・?」
そっと彼を覗うと、鋼牙も苦しそうな表情を浮かべていた。
今の鋼牙の心境はカオルには窺い知れない。
ごめんね、鋼牙・・・。
私鈍いよね。
何にも分かってなかった。
思えば、鋼牙と出会った頃もそうだった。
あなたがどれほど私のためにその身を盾に戦ってくれていたか、まるで分かってなかった。
言葉じゃない方法で、たくさん・・たくさん伝えてくれていたのに。
あなたは助けてくれた・・・。
守ってくれた。
支えてくれた。
いつだってそばにいてくれた・・・!
だからそんな顔をしないで。
あなたは確かにイタリアにはいなかったけど。
ずっと私の傍にいてくれたよ?
鋼牙はぎゅっ、と私の指を絡めて手をつないだ。
決して離したくない、と伝えるような指の強さに想いの深さを感じる。
演奏の終わりを告げる拍手がホール中に響いた。
鳴り止まないスタンディングオベーションの中、ピアニストの彼は舞台で深くお辞儀をする。
顔を上げた彼と確かに目があった気がした。
ゆっくりと舞台袖へと消えていく彼を目で追いながら、その手が震えていることに気が付いた。
どれくらいの勇気を振り絞ってくれたんだろう。
どれくらいたくさんの想いをこめてくれたんだろう。
「・・鋼牙、ごめん・・・私行かなきゃ。」
「あぁ、・・・分かってる。」
繋いだままの手が宙に浮かんだ。
「待っていてくれる?」
「あぁ。
そのために俺は来た。」
鋼牙の言葉に背中を押されて、私は観客の隙間を縫いながら出口を目指す。
舞台裏で私を待っている彼に会うために。
人々の隙間に消えていくカオルの背を見送りながら、やはり不安をおぼえる自分に、鋼牙は嘲笑を浮かべた。
たくさんの歓声。
割れんばかりの拍手。
まるで自分の生きる世界とは別に思える。
人々の中に溶け込んでいくカオルの姿に・・・いつか自分は彼女を見失ってしまうのではないかと、そんな考えが頭をよぎった。
輝かしい世界。
輝かしい未来。
そこに自分の居場所はないだろう。
努力が、正しい成功で報われる世界。
あのピアニストのようにカオルにはそんな世界を生きてほしい。
そう願う反面、彼女の手を離せない自分がいる。
何の不自然さもなく、カオルの横に並び立つことができる青年に・・・無性に嫉妬をおぼえた。
・・・羨望ともいえるだろう。
俺には決して手の届かない場所。
魔戒騎士と人間。
そびえたつ壁をまざまざと見せつけられるたび胸が痛んだ。
本当はここへは来たくなかった。
今だって逃げ出したい。
けれどカオルが望んでくれるなら。
カオルが笑ってくれるなら。
ここで逃げ出すような情けない男にはなりたくない。
―――・・・
舞台裏へと続く扉の前で、彼は待っていた。
「かっ・・・カオルさん///」
「あ・・・あの・・・・これ・・・。」
手に持っていた花束を差し出すと、ピアニストの彼は顔を真っ赤にさせながら受け取った。
「あ、ありがとう・・・・。」
それだけ言葉を交わすと、お互い黙り込んでしまう。
どう話を切り出せばいいか分からなくて、私は目を泳がせた。
「ほっ・・・本当は!」
緊張で声を震わせた彼が、先に口火を切る。
「イタリアで・・・賞をとったら告白するつもりでした・・・///
自分に、自信が持てたら・・・と。」
「演奏・・・すごく、素敵でした。
でも・・・。
ご、ごめんなさい!」
彼の気持ちは受け止められない。
私にはただ頭を下げることしかできなかった。
「そ、その・・・私には・・・。」
「・・・ですよ、ね!」
え?
はた、と今一度彼と向き合う。
彼は昔と同じ人懐っこい笑みを浮かべてそこにいた。
「そんな気がしてたんです。
イタリアで出会った頃からずっと。
時々、何も嵌めてないはずの左の中指を触ってたでしょう?
自分では気づいてなかったかもしれないけれど、僕はピアニストのせいかよく他人の指を見るから・・・。
そのクセが出る時、カオルさんはいつもすごく幸せそうな顔をしてた。
で、たぶん・・・そういうことだろうなぁ、と。」
そうなの?
まったく自分では気づいていなかったから、私は目を丸くする。
「困らせてしまってすみません。
でもどうしても、自分に踏ん切りをつけたかったんです。
あの日、カオルさんに伝えられなかったこと・・・やっと伝えられました。」
「ごめんなさい・・・。」
再び頭を下げると、彼は気遣うように笑って頭を掻いた。
「あぁ・・・いやぁ!
もう謝らないでください。
むしろ僕はお礼を言いたいくらいで;
あの日気持ちを伝えて玉砕してたら、やっぱり僕はピアニストにはなれなかったかもしれない。
カオルさんが僕に猶予をくれたんですよ。
おかげで、こんな花束をもらえるくらい出世しました!」
そういって明朗に笑う彼の笑顔に私の心も救われる。
きっと彼は、私が自分を責めたりしないで済むように気を遣ってくれているのだろう。
あの頃も彼の笑顔が安らぎをくれた。
「私の方こそ、本当に・・・ありがとう。」
―――・・・
帰りの車の中、私は流れるネオンの景色を見つめながら鋼牙に語りかけた。
「鋼牙・・・。
待っててくれて、ありがとう。」
「・・・彼とは、話せたのか?」
「うん。
すっごく良い人だった。
ねぇ、鋼牙はコンサートどうだった?」
「・・・・。
最後の曲が・・・一番良かったな。」
鋼牙の横顔は穏やかで、ほっと息をつく。
「私も、鋼牙と一緒に聴けてよかった。
・・・・ね、妬きもち妬いたりした?」
「妬くか・・・。」
「え~~~。」
嘘つきだなぁ。
「じゃあ、なんで昨日怒ってたの?」
「別に怒ってない。」
「じゃあ、なんで私達喧嘩したんだっけ?」
問答をしている内に、冴島邸のガレージについてしまう。
駐車した後、鋼牙はエンジンを切るとシートベルトを外しハンドルの上にふぅ、と両肘をついた。
暗い車内に、フロントガラスから月明かりだけが差し込んでいる。
諦めたようにため息をついた鋼牙を、私はどこか優越感を感じながら見つめた。
会話の先に逃げ道がないことを知っている。
観念したのか、鋼牙は両肘をついたまま顔だけ私に向けて白状した。
「お前のことが好きだから。」
月明かりが瞳を反射している。
彼の頬が紅い。
私の体温も熱くなる。
狭い車内で、鋼牙の手がシートの上の私の手を摑まえた。
そのまま覆いかぶさられてキスを受ける。
掌から伝わる体温と、絡み合う舌の熱さにぼんやりと意識が霞んで、切なさに伏せた瞼が揺れた。
ゆっくりと離れた唇からこぼれる銀糸が恥ずかしくて、私は口元を覆って鋼牙を睨む。
「・・・っ////やっぱりヤキモチ妬いてたんじゃない・・。」
「不服か?」
「ちゃんと、謝って・・・キスからやり直して!///」
一緒に居られなかった時間を、全部埋め合わせてもらうから。
あなたと私の心の場所。
きっと手を伸ばせば届くはず。
そびえたつ壁だって、乗り越えられる。
私が鋼牙を好きで。
鋼牙が私を好きでいてくれるなら。
この気持ちがあればきっと大丈夫。
―Now at last we can talk in another way.
And though I try, "I love you" is just so hard to say.
If only I could be strong, and say the words I feel.
And though I try, "I love you" is just so hard to say.
If only I could be strong, and say the words I feel.
詳しいお話はまた改めて;
UPが遅くなり本当に申し訳ありませんでした!!(泣)
これには細くて長い事情があるのですが、何はともあれスイマセンでした!!
PR
Comments
みお様、拍手ありがとうございます!
今回も拍手メッセージ頂きまして、誠にありがとうございます。
「変わり映えしないコメント」だなんて、滅相もない!w
言葉のひとつひとつが大変嬉しいです!
作中で出てきたクラシックも聴いてくださったんですね~(*^_^*)
メッセージ頂けて本当に助かってますよ。
またぜひ遊びに来てくださいね☆
「変わり映えしないコメント」だなんて、滅相もない!w
言葉のひとつひとつが大変嬉しいです!
作中で出てきたクラシックも聴いてくださったんですね~(*^_^*)
メッセージ頂けて本当に助かってますよ。
またぜひ遊びに来てくださいね☆
匿名様、きゅんきゅんして下さりありがとうです!
拍手ゴッチャンデス☆
間違えてEnterキー押しちゃったんですねww笑
うふふvうっかりさん☆(*´∀`*)
萌え萌えしてもらえて本当に一安心です。
こちらこそありがとうございました☆
間違えてEnterキー押しちゃったんですねww笑
うふふvうっかりさん☆(*´∀`*)
萌え萌えしてもらえて本当に一安心です。
こちらこそありがとうございました☆
りのん様、ご無沙汰しちゃってすいません!orz
拍手ありがとうございます!
一二三、音楽は何でも聴いちゃうんですよw
クラシックもポップもロックもテクノもw本当になんでも。
小説を書くときも絶対なにか聴いてます♪
最近はもう~~NOSTAROGICですよv
でも聴き入っちゃってよく手が止まるのが難点です!!\(^o^)/
コニタンぱわーすごいですねww
一二三、音楽は何でも聴いちゃうんですよw
クラシックもポップもロックもテクノもw本当になんでも。
小説を書くときも絶対なにか聴いてます♪
最近はもう~~NOSTAROGICですよv
でも聴き入っちゃってよく手が止まるのが難点です!!\(^o^)/
コニタンぱわーすごいですねww
是空様、うわぁvありがとうございます~!
いつも拍手お世話になっておりますv
すっごい、ほんと大助かりです!(`・ω・´)
鋼牙、男前ですか!
いや~嬉しいw今回はそこを目指したのでww
「めーちゃくちゃ嫉妬」した状態ってどういうのか想像した時に、モヤモヤした状態を越えちゃった段階かなと思ったんですよw
それは「魔戒騎士としてじゃなく、男として絶対負けたくない鋼牙」というラインで書きたいな、と思いましてこういう話になりました。
だからいつもなら関心しないふりしてコンサートに行かないのが鋼牙の性格なんですが、「ここで逃げたら男じゃねえ!」wと今回は相手のフィールドに下りて戦って貰おう、とww
是空様に「超かっこいいです!」と称賛してもらえて鋼牙さんも喜んでいるでしょうww
これからも応援よろしくお願いします!
すっごい、ほんと大助かりです!(`・ω・´)
鋼牙、男前ですか!
いや~嬉しいw今回はそこを目指したのでww
「めーちゃくちゃ嫉妬」した状態ってどういうのか想像した時に、モヤモヤした状態を越えちゃった段階かなと思ったんですよw
それは「魔戒騎士としてじゃなく、男として絶対負けたくない鋼牙」というラインで書きたいな、と思いましてこういう話になりました。
だからいつもなら関心しないふりしてコンサートに行かないのが鋼牙の性格なんですが、「ここで逃げたら男じゃねえ!」wと今回は相手のフィールドに下りて戦って貰おう、とww
是空様に「超かっこいいです!」と称賛してもらえて鋼牙さんも喜んでいるでしょうww
これからも応援よろしくお願いします!
龍鈴様、ツンデレは良いですよね!d(´Д`*)
今回も拍手とっても嬉しいです!v
鋼牙は切ないですよね・・・むしろその切なさを大事にしたい(by一二三・談)ww
そうなんですよw
ピアニストの彼は堂々と光の下でカオルと接することが出来ますが、鋼牙にはそれが出来ない。
実は『コンサートホールで称賛拍手を受ける彼とカオル』と『月明かりのみの暗い車内の鋼牙とカオル』は対比でした。
ピアニストの彼とはまったく逆で、鋼牙は世間の暗闇の中でしかカオルと接することが出来ない。
鋼牙が嫉妬するとしたらそこだろうな、と!
あまり効果的に描写できませんでしたが(;´Д`)汗
最後のシーンにはそういう意図がありましたw
龍鈴様にはまるっとお見通し☆されていそうww笑
いやぁ~v嬉しいです。
いつもありがとうございます。
鋼牙は切ないですよね・・・むしろその切なさを大事にしたい(by一二三・談)ww
そうなんですよw
ピアニストの彼は堂々と光の下でカオルと接することが出来ますが、鋼牙にはそれが出来ない。
実は『コンサートホールで称賛拍手を受ける彼とカオル』と『月明かりのみの暗い車内の鋼牙とカオル』は対比でした。
ピアニストの彼とはまったく逆で、鋼牙は世間の暗闇の中でしかカオルと接することが出来ない。
鋼牙が嫉妬するとしたらそこだろうな、と!
あまり効果的に描写できませんでしたが(;´Д`)汗
最後のシーンにはそういう意図がありましたw
龍鈴様にはまるっとお見通し☆されていそうww笑
いやぁ~v嬉しいです。
いつもありがとうございます。
みゆ様、こんばんは!
いつもお世話になっております!
拍手、ありがとうございました!!
カオルが可愛いって言ってくれて嬉しいですv
次回も一二三の健闘を祈ってやってくださいね☆
頑張るぞ!(゚ω゚*)だいたい失敗やらかすけども頑張るぞww笑
拍手、ありがとうございました!!
カオルが可愛いって言ってくれて嬉しいですv
次回も一二三の健闘を祈ってやってくださいね☆
頑張るぞ!(゚ω゚*)だいたい失敗やらかすけども頑張るぞww笑
Post a Comment
Calendar
New
(05/08)
(09/14)
(11/15)
(11/08)
(01/06)
Search
Counter
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
Powered by "Samurai Factory"