一二三です！
 
先週末はＵＰ逃しちゃって本当にスイマセンでした！
長編小説のラストはまだＵＰ出来るような状態じゃないんですけれども；せめてものお詫びにショートストーリー書かせていただきました☆
 
ちょっとした息抜き程度な内容ですが、「春」を感じて頂ければ幸いですｖ
 
 
では「つづき」クリックで、　『水桜』へどうぞｖ
 

 

 
 
 
「うわぁ！きれー！可愛い～～！」
 
春のぽかぽかとした陽気に誘われて、今日の午後のお茶はお庭で頂きましょう、と提案した執事は、思った通りの彼女の反応に頬をほころばせた。
 

 
   
 
「今日は桜茶を淹れてみました。
　春らしくて良いでしょう？」
 
「うん！すっごい綺麗！
　こういうのあるんだ！
　私知らなかった～。」
 
小さいお茶碗の中に美しく花びらを開いた一厘の桜が揺れている。
とても愛らしい見た目に心が躍った。
 
「なんか可愛い～！」
 
「加え、今日は桜もちをお茶請けにご用意いたしました！」
 
「わ～～！ゴンザさん気が利いてる～～！！
　うんうん♪春爛漫って感じ！」
 
 
 
庭先に出るとカオルの明るい声が耳に届く。
 
つい先ほどまで書斎にこもっていた俺には、外の光は眩しくて少し目を細めた。
 
空は水色に澄み渡り、冬とは違った様子を見せている。
 
・・・あぁ、もう春か。
 
 
「鋼牙！
　ねぇ、見て見て！
　今日は桜茶だって。」
 
 
たかがお茶で両手をテーブルについて楽しそうに語る心理はよく分からないが、まぁ確かに季節感があるのは風流でいいのかもしれない。
 
茶碗の中で一厘の桜がたゆたっている。
水に透ける桃色の花弁は、確かに美しいものだ。
 
「だが、なぜ桜茶なんだ？
　何かめでたいことでもあったのか？」
 
テーブルの脇でお茶請けの桜もちを器に乗せているゴンザに尋ねれば、彼はにこにこしながら答える。
 
 
「さぁ、それはどうでしょう。
　おめでたいご報告はいずれ近いうちにあると私は希望しているのですが？」
 
チラリとメガネの向こうの視線が俺を射抜いた。
 
うっ・・・。
 
「・・・；苦い茶だ・・・。」
 
俺は渋い表情で、ガーデンチェアに腰を下ろす。
 
 
「えー？なになに～？
　何の話？」
 
「・・・こっちの話だ。」
 
咳払い一つで誤魔化すと、カオルの興味はすぐ他に移った。

 
「春はいいよね～！
　色で溢れてるっていうか～！明るいし！
　今日これから写生に行こうかな♪
　桜並木も今ごろ満開だろうし・・・。
　ねぇねぇ、鋼牙は桜好き？」

 
好きとか嫌いとか・・・花や木に思ったことがない。
このあたりやはり常人とは感覚が違うのだろうか。
というより、そもそもの感性の違いのような気もするが。
 
「いや、特には。」
 
「え～～っ、何その答え。もったいないなぁ・・。
　じゃあさ！一緒に見に行かない？
　どうせオブジェの浄化に桜並木の近くを通るんでしょ。
　今見ごろだし、きっと鋼牙も気に入ると思うよ！」
 

・・・お前は俺をなんだと思ってるんだ？
 
「桜ぐらい、今までだって見たことあるんだが。」
 
今更改めて見たところで、別段違った感想など出てこないだろう。
 
どこか矛盾したカオルの意見に、俺は眉根を寄せた。

 
「一緒に、ってところが大事なんだよ～！」
 
続けてカオルは唇を尖らせる。
 
「それに、鋼牙の“見たことある”はオブジェまわってる最中に、道路脇に生えてるな～とかその程度でしょ？」
 
正直『見る』という行為においては同じことじゃないのか・・・；
一体何が違うというのか。
 
反論したい気持ちを、宙に視線を惑わして解消する。
 
どうしたってカオルを納得させるのは難しい。
何かというと、彼女は俺を頑固だの融通が利かないだのと言うが、カオルだって充分に頑固だ。
 
一途・・・というやつか・・。
 
「分かった・・・どうせ通るんだ。
　着いてくる気なら好きにしろ。」
 
我ながら言葉遣いが下手だ。
なぜもっと素直になれないのか。
 
いつも意地を張って突き放すように言ってしまう。
 
日常の延長線上にあるような、ほんの些細な事が何よりも嬉しいのに。
またカオルに押し負けたのかと思うと、素直に言葉に出来ない。
 
機嫌を損なわせてしまったか？とカオルを覗うと、満面の笑みで桜もちを一口頬張っていた。
 
・・・女とは不思議な生き物だ。
甘いもので幸せになれるんだから・・。
まぁ、男でも一人いるか・・・。

 
「やったー！ゴンザさん！
　鋼牙一緒に行ってくれるって～！」
 
「ようございましたね、カオル様。」
 
 

・・・“着いてくる気なら好きにしろ”

こんな言い方だったのに、なぜ正常に伝わっているのか・・・。

思わずカオルをまじまじと見つめてしまう。

 
「ん？なぁに？」
 
「いや、本当に幸せそうに食べるな、と思って・・・。」

 
コロコロと目まぐるしく表情を変えるカオルを見ていると飽きが来ない。
 
「うん！ゴンザさんの料理はどんな時も美味しいけど、いいことあるともっと美味しくなるでしょ？
　だから幸せ～！」　
 

気分次第で味覚が変わる、か・・・。
 
・・・確かに。
 
俺は茶碗の中で花開いている桜に目線を落とした。
 
昔一度飲んだ時、これはひどく味気ないものだった。
視覚上の違いはあれど、ただのお湯を飲んでるのと何も変わらなく思えた。
 
 
だが不思議と今は、桜の香りと味・・・と言っていいものか分からないが、そんなものを感じている。
 
透き通る桃色の花弁に、ぬくもりというか・・・優しさを感じた。
 
カオルと出会ってからというもの、日常がもたらすほんの小さな優しさに気が付けるようになったと思う。
 
彼女と出会う前まで、季節や空の色なんて気にしたことなんてなかったし、ゴンザがカーテンやテーブルクロスの色を小まめに変えていたなんて事実も、カオルに教えられるまで気が付かなかった。
 
 
カオルが現れて、俺の世界がさまざまな色を帯びるようになっていった。
 
 
味覚と同じように、気分次第で視覚も変わるのだろうか？
 
 
お前がいるから、この世界は美しく輝いて見えるのか・・・
 


「鋼牙が一緒だから、いつもより美味しく感じるよ！」
 
 
・・・・
 
・・・・参った・・。
 
 
「・・・・////
　・・・・馬鹿みたいだ。」
 
 
「な、にィーーー！？」
 
 
俺の顔が水に浮かぶ桜のように薄桃色の染まったことを、熱くなった頬に押し当てられたザルバだけは気づいているだろう。
 
いきり立つカオルに先導されながらその日見た桜並木は、これまでと同じはずなのに今まで見てきたものよりもはるかに美しく、俺の認識にまた一つショックを与える結果となった。
 

 
結論・・・
気分次第で世界だって輝く。
 
 
 
 
 
   
気持ちひとつで色んなものって変わるよね！(*´∀｀*)
 
仕事中理不尽なことがありイラッとしちゃったんだけど、ちょうど信号で止まってた時、車窓から見える桜並木の道をベビーカーをひく女性歩いてて、赤ちゃんの愛らしいちっちゃな手が落ちていく花びらを触ろうと伸ばしている姿を見て、「世界って輝いてるなぁ・・・」と思った一二三です。
 
なんだかそれで苛々とした理不尽な出来事も許せてしまって、気持ちひとつで世界って変わるな～とｗｗ（←単純☆）
 
春って忙しくて目まぐるしくて大変ですけれど、気分転換の一つになれれば幸いです。

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