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Posted by 一二三 - 2010.09.12,Sun

 
 
 
あの時のまばゆい光を覚えている・・・
 
 
きっとあれは至高の輝き・・・
 
 
 
『ひかり』
 
 
 
 
どんなに天才の私でも作れない色がある。
 
 
それが、あの金色。
 
なんとか描いてみようといろいろ試したけれど、どれもあの至高の輝きには近付けない・・・。
 
 
黄色に茶色を混ぜても錆色を混ぜても、私は近付けない。
 
 
自分がどうやっても、どんなに頑張っても「あいつ」には近付けない・・・。
 
肩を並べたいと思っても、隣を歩きたいと思っても、「あいつ」はいつも私より足が長く、三歩先を歩いているのだ。
 
くやしい。
 
 
涼しい顔の下に何を隠しているの?
 
苦悶の顔の下にどれほどの悲しみを抱えているの?
 
 
・・・私にそれを分けてはくれないの?
 
 
くやしい。
 
いつか絶対に追いついてやって問い詰めてやろうと思っても、ううん、思えば思うほど「あいつ」を遠く感じる。
 
 
そんな自分が嫌い。
 
どうして素直になれないのか、近づきたいのに触れるのが怖いなんて。
 
 
 
私、いつからこんなに引っ込み思案になったの・・?
 
 
金色の鎧を描いていた筆を投げ捨てて外に飛び出した。
 
冷たい空気が私の頬を撫でる度に次第に心が落ち着いていく。
 
 
「カオル様、どうなさいました?」
 
 
ゴンザさんだ。
 
そりゃ心配もするわよね、玄関脇に座り込んでたら。
 
「・・・私、変なんだ。
 鋼牙に会ってから」
 
「なんか、ちょっと自分らしくないなって。
 引っ込み思案になっちゃったっていうか、思ってること、うまく口に出来なくて・・・。」
 
 
「鋼牙様に、何かおっしゃりたいことがあるのですか?」
 
 
ゴンザさんはどっこらしょと隣に座って優しく問いかけてくれる。
 
「言いたいことがあるのに、聞きたいことがあるのにうまく言葉にできなくて、それで自己嫌悪・・・違いますか?」
 
 
「なんで?どうしてわかっちゃったの!?」
 
驚いて聞くと、ゴンザさんはさっきと同じように落ち着いて優しく言ってくれる。
 
「お二人をいつも見ていますから。」
 
 
そういわれては、なんとも言い返せない・・・。
 
「・・・・。
 カオル様、失礼だったら怒っていただいて構いません。
 カオル様は、鋼牙様を想っていらっしゃるのですか?」
 
 
えっ
 
「・・・・わからない。」
 
 
あいまいな答えだったのに、ゴンザさんはそれでいいと思ったのか、話題を切り替えた。
 
 
「それにしても鋼牙様はカオル様と出会われて、大変変わられました。
 昔はホラーを狩ること以外、無口、無関心、無表情の無い無い尽くしでしたから。」
 
 
「そうだったの?
 いつも人のことにベラベラ嫌味は言うし、ガンガン
 怒るし、ウンチク説教するし、わがままだし、ヤな笑みは浮かべるし・・・、一体どういう教育したらあんな嫌味な男になるのかしら。」
 
 
「それは、ありがとうございます!!」
 
途端ゴンザさんが満面の笑みを浮かべてお礼を言った。
 
「え・・?
 なんで、お礼言うの?」
 
「感謝しているからです!」
 
ゴンザさんはとってもニコニコしている。
 
 
 
 
「おい。」
 
 
はっとするあの声。
とりあえず、今は聞きたくなかった声だ。
 
 
「誰が嫌味な男だ!」
 
静かだが地響きしそうなくらい怒った声。
 
「きゃー!ごめんごめん!!」
 
 
 
「鋼牙様、おかえりなさいませ。」
 
 
「全く、ゴンザまで一緒になって・・・。」
 
そう言った鋼牙はちょっと笑っているように見えた。
 
夕日に映える美しい青年がそこに立っていた。
 
まるでそれは、黄金の鎧を身にまとったような輝きで・・・。
 
 
「鋼牙。
 おかえり!」
 
 
「・・・・ただいま」




――――――


カオルのモノローグのような感じ。

「水槽」の少し前くらいの設定で。

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