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Posted by 一二三 - 2011.01.23,Sun

どうも!本日2度目の一二三でっす!!


いつもアホな一二三ですが、時には真面目なこともあるような気がするwww
↑ というスタンスでこの記事は見ていただけると幸いです(笑)


『牙狼』という作品は「人間の陰我(欲望)」を描いてるだけに、どこか重く暗いものです。
あえて、今までこのテーマについて触れてきませんでしたが。


『牙狼』の中で描かれてきた、心に痛いけど大切なこと。

今回はそれに焦点を当てて書いてみました。


という訳で、「Red Requiem」からアカザを主人公に。
彼の行動の理由が、映画ではあまり掘り下げられなかったのが非常に残念です。
(あまりにもストーリーが重くなってしまうからかもしれませんが・・・。)


~読む前に注意!~

・挑戦的で挑発的
・映画のネタバレを含む
・非常に話が重い
・妻子の死因については公式設定
・それでも鋼牙はアカザを責めなかった

以上、いつになく真面目な注意です。

一二三が色んなことに憤っておりますのでww、寛容な方のみオススメいたします。



ではでは「つづき」クリックで小説 『人間以下』へどうぞ。






 
 
――教えてくれ、命の尊厳について。
 
 
 
 
『人間以下』
 
 
 
 
 
 
手を繋いだ娘の顔は暗い。
 
使徒ホラーの一体、魔境ホラー・カルマ討伐の任を受け、俺は娘を旧知の魔戒法師に預けることにした。
 
 
 
死ぬかもしれないからだ。
 
 
 
「・・・お待ちしておりました。」
 
出迎えた男も娘同様暗い表情で、それがなんとなく面白かった魔戒騎士はかすかに微笑んだ。
 
 
「突然の頼みごとを引き受けてくれて助かった、アカザ法師。」
 
 
「いいえ・・・。
この子が烈花ですね。」
 
顔を覗きこまれて恥ずかしいのか、娘は俺の脚に隠れる。
 
 
「まだ幼いが、いずれは立派な魔戒法師となるだろう。
 よろしく頼む。」
 
 
 
深々と頭を下げ、娘をアカザに託すとその場を去ろうとした。
 
「ケンギ殿!!」
 
 
呼び止められてもう一度アカザの方に振り向くと、彼は少し言いよどむ。
 
「・・・。
・・・どうか、死なないで下さい。
守りしものとして・・・。」
 
 
“守りしもの”か・・・。
俺にその資格はあるのだろうか。
 
 
「法師、一つ聞かせてくれ。
 人間は・・・・命を懸けて守るに値する存在だと思うか?
 俺の死に・・・・意味はあると思うか?」
 
 
「!それは・・・
 その、答えは・・・・」
 
うな垂れるアカザの隣では娘が不安げに俺を見つめている。
 
 
「大丈夫ですよ!
 人間は守るに値するし、その人間を守っているあなた達は素晴らしいことをしているんです。」
 
 
答えたのはアカザではなく、柔らかい女性の声。
 
 
 
アカザの妻だった。
 
ぺこりと一礼すると、烈花の頭を優しく撫でて微笑む。
 
その向こうでは烈花よりいくつか年下のアカザの娘が楽しそうに笑っていた。
 
 
絵に描いたような幸せな光景。
 
今更ながら、この家庭に烈花を預ける選択をして良かった。
 
 
このあたたかい家族に包まれて育てば、きっと烈花は父親がおらずとも幸せになれるだろう。
 
妻の言葉に満面の笑みを浮かべてアカザも賛同を示した。
 
 
「そうですとも、ケンギ殿!
 どんな人間にも、どんな命にも価値があるのです!
 私はそう信じます。」
 
 

それが聞きたかった。 
 
 
 
「・・・ありがとう。
 誰かに、答えて欲しかったんだ・・・・!」
 

 
救われた気がした・・・。
 
俺の選択は正しかったのだ・・!
 
 
 
たとえ、俺の命がもうじき終わるとしても、それは意味のあることだと。
 
 
 
―――
 

 
 
アカザは遠ざかっていく背中を見えなくなるまでずっと見つめていた。
 
魔戒騎士を、そして魔戒法師たる己を誇らしく思う。
 
そしてそのどちらにも属さない妻が、ただの人間である彼女が、自分達のことを分かってくれていることが嬉しかった。
 
 
今日から我が家には娘が二人になった。
 
それはこの上なく幸せなことだ。
 
 
だからこそ、ケンギの帰還を祈らずにはいられなかった。
 
 
 
「かわいそうに・・・・。
 娘をひとり残して戦いに行かなければいけないなんて・・・。」
 
妻は魔戒騎士の因果を嘆く。
 
「ねぇ・・、どうして人間は陰我なんて抱くのかしら?
 みんな幸せなら、いいのに・・・。」
 
 
「世の中にはおかしな人もいるんだよ。」
 
 
「・・・・あなたは人間が嫌い?
 わたしのことは・・・」
 
 
「何を言うんだ。
 私は人間が好きだよ。
 君のことも、娘のことも愛してる。」
 
 
「そうね、・・・・そうよね。
・・・私も人間が好きだわ。」
 
 
“誇りに思う”
 
そう言って妻は笑っていた。
 
 
 

 
 
 
―――・・・・
 
 



 
「――はっ・・・」
 
 
ふと夢から気が付くと、私は病院の椅子に腰掛けていた。
 
暗い廊下に、足元のみを照らす緑の電灯が冷たく光っている。
 
 
夜のためか辺りには人っ子一人居らず、しんと静まり返った空気は耳が痛くなるほどだった。
 
 
右手にはボールペン。
 
膝の上には薄いぺら紙を乗せていた。
 
 
紙の一番上に書かれている文字には「死体検案書」とある。
 
・・・・なんだこれは・・・。
 
 
早鐘を打つ心音が耳元で聞こえる。
 
どっと冷や汗が溢れた。
 
 
 
己の目の前には一つの扉が立ちはだかっている。
 
 
重々しい扉の室名には「霊安室」と無情にも書かれていた。
 
 
 
うそだ。
 
そんなはずはない。
 
 
妻はデパートに行くと言っていた。
 
娘を連れ立って、烈花のためにお揃いのかわいいワンピースを買いに行くのだ、と。
 
 
なのになんでこんなところにいる。
 
 
 
もうじき帰ってくるはずだ。
 
 
これは何かの間違いだ。
 
この部屋にいるのが妻と娘であるはずがない・・・!!
 
 
 
ゆっくりと霊安室の扉を開くと、防腐剤の匂いでクラリとした。
 
揺らめく祭壇のろうそくが、二つの死体を照らしている。
 
 
一つは細いもの。
 
もう一つはとても小さいもの。
 
 
白い布に覆われている。
 
 
嘘だ、嘘だ、うそだ・・・!!
 
絶望と狂気に身を震わせながら、アカザは顔に被せられた布を捲る。
 
 
 
残酷な現実が待っていた。
 
 
 
 
警察の話によると、妻と娘は大通りを歩いている際・・・見知らぬ男に刺されたらしい。
 
通り魔殺人と銘打たれた事件の理由はあっけないものだった。

 
 
“だれでもいいから殺したかった”
 
 
 
そうか・・・私の妻と娘が死ななければならなかった理由はそんなものか。
 
 
その程度のものなのか。
 
 
 
貞淑な妻だった。
 
とても素直で優しい娘だった。
 
 
二人の半分の価値もない人間によって命を断たれたのだ。
 
 
 
死ねばいい。
 
私の手で殺したい。
 
 
 
初めて人間を憎いと思った。
 
憎しみは二人の葬儀が終わっても、とどまることを知らなかった。
 
街中を歩くと、かならず妻と娘が刺されたときのことが思い浮かぶ。
 
 
誰一人として助けてはくれなかったらしい。
 
大通りには多くの通行人がいたはずなのに・・・・!!
 
 
皆、妻と娘が惨殺される様をただ見ていた・・!
 
許しはしない、誰一人として!
 
 
見て見ぬふりをした者も同罪だ。
 
 
 
 
「・・・アカザ、怖い顔してるよ・・?」
 
弟子のシグトの声ではっと思考から引き戻される。
 
 
そうだ、私には二人の弟子がいる。
 
魔戒法師の弟子が・・・。
 
私とて騎士には及ばないが、守りしものなのに・・・。
 
ついさっきまで何というおそろしいことを考えていたのだろう・・・。
 
押し留めねば。
 
この憎しみを、狂気を。
 
 
そうでなければ、魔戒騎士ケンギの死に報いたことにならない。
 
せめて正義の心でもって彼の子、烈花を育て上げねば。
 
 
 
 
“本当にそれでいいのか?”
 
“醜い人間のために命を懸けて戦うのか?”
 
 
・・・・やめろ。
 
私は闇になど屈しない。
魔戒法師なのだから・・・!
 
 
“お前の愛するものの命を奪ったのに?”
 
 
・・・やめてくれ・・・!!
 
 
“哀れな魂よ・・・・”
 
 
自分自身のものだと思った心の声は、次第に妖艶な女の声へと変わっていく。
 
 
“お前の望みをかなえてやろう。
 この私に仕えるなら、お前の愛するものたちを蘇らせてやってもよいぞ?“
 
 
“この手鏡で、いつでもお前の家族に会える。
 見ることの出来なかったはずの娘の成長さえ・・・“
 
 
 
道に外れたことと分かってはいても、女の声はあまりにも甘美な魅力に満ちていた。
 
―あなた!
―お父さ~ん!
 
 
ああ・・・聞こえてくる!
 
妻の声が、娘の声が・・・・!
 
 
この声のためなら、私はいかなる罪も罰も受けよう。
 
汚辱にまみれようと、魔戒法師としての己を棄てようと構いはしない・・・!
 
 
 
 
そしてその果てにあるものは・・。
 
 
烈花、シグト・・・・私はいつか




お前達に討たれたい・・・。
 
 


鏡を受け取り、私は心の中でむせび泣いた。
 
 
 
「ガロよ、教えてくれ・・・。
 
 人々の希望を背負って生まれし者よ。
 
 
 
 
 人の命の尊厳とは何だ・・・・・。」
 
 
 



 
- to Red Requiem
 
 
昨今痛ましい事件が多すぎる・・・!!
世の中どうなってんだ!!(怒)
 
と日々思っているだけでは何も変わらないのですよね・・・。
 
でも何かしたい・・・!何かしなきゃ・・・!!
作品は(牙狼はもちろん、他の色んな音楽でも絵画でも、小説でも、映画でもドラマでも建物でも機械でも)人の心を動かす力があると思います・・!
それは同じ『人』が作っているからに他なりません。
 
人間にはそんな力があると、一二三は信じています。
 
 

拍手[26回]

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Comments
風の道様、こちらこそありがとうございます!
拍手ありがとうです!!

一二三の方こそ、こんな葛藤を受け止めてくださり、感謝の言葉もありません。

本当にありがとうございます。


もし一二三がアカザの立場だったとすると、きっと間違っていると分かっていても、同じようにしてしまうと思います。

人間って強くもあり脆くもあるものですよね。

その両面を描いている牙狼という作品。

大好きです。
Posted by 一二三(管理人)です - 2011.02.07,Mon 01:07:31 / Edit
匿名様!救われた気がします。
拍手&コメントありがとうございます!!

ごめんなさい、お名前が表示されませんでしたので、「匿名様」とお呼びしますねw;

「大切な人のことを考えさせられるお話」と評してくださり、本当に救われた気がします。

雨宮監督の持論でもありますが、「死は突然訪れるもの」・・・・。

確かにそうなんですよね。

一二三も一日一日、一人ひとりとの出会いを、日々を・・・大切にしたいと思います。


Posted by 一二三(管理人)です - 2011.02.07,Mon 23:16:46 / Edit
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