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Posted by 一二三 - 2010.11.21,Sun


皆様こんばんわ!一二三です。

いつも拍手、ありがとうございます!


ところで今日、一二三の地域では雨が降りました。

皆さんのところではどうですか?


一二三は土砂降りや台風、大雨は怖いですが、しとしとと降る雨は好きです。

朝からだとテンションだだ下がりですがwww



雨が降るとしんみりしますよね。

頭を落ち着かすにはたまにいいと思います。

というわけで出来た小説はこの『慈雨』。

「RED REQUIEM」支援小説とも取れなくも無い・・・・www

ちょっとばかし、ネタバレかもしれないので映画見てない方は用心を。



まず、初めに・・・明るくないです!(苦笑)

非常に暗いです。

おそらくは、999hit 御礼小説1、2を越える暗さです。

しんみりしたい方向けということで、よろしくお願いしますね。

鋼牙がカオルと出会う前の話です。


 『慈雨』 つづきクリックでどうぞ。
 



「まだまだ、だな・・・。」
 
 
男は軽く鋼牙を投げ飛ばし、そのまま草むらに転がる彼を見下ろして朗らかに笑った。
 
一方、鋼牙は自信を失いかけていた。
 
 
優秀な魔戒騎士の父を持ったからといって、自分も父のような魔戒騎士になれるとは露程も思えなかった。
 
なぜなら、彼の拳は目の前の男に掠りすらしない。
 
勢い勇んで拳を繰り出しても、押し出すのは空気ばかりだ。
 
 
「だめだ、だめだ坊主。
 そんなに力んでいてはすぐに動きを読まれるぞ。」
 
父という師を失い、どのように強くなっていったらいいのか分からなかった鋼牙が、この男と出会ったのは1ヶ月ほど前のことだった。
 
 
 
 
 
『慈雨』
 
 
 
 
 
 
 
夏の雨は鬱陶しいが、冬の雨は好きだ。
 
あの、底冷えするような感覚が・・・胸の傷みをごまかしてくれる。
 
なにより、どこか澄んだような空気が好きだった。
 
まるで世の中の不浄なものを一瞬だが洗い流したように思えて・・・。
 
 
鋼牙は白いコートを重く引きずって歩きながら、雨に濡れて額に張り付いた髪をどかした。
 
 
夜に降る雨は優しく、しとしとと路面を濡らす。
 
 
静かだ。
 
ずっとこうならいいのに。
 
・・・ずっと夜で、雨ばかりならいい。
 
 
 
今日はホラーを一体斬った。
 
気を紛らわすにはホラー狩りは丁度いいが、気分はよくないな・・・。
 
他人事のように思う。
 
 
 
ケンギと呼ばれる魔界騎士が死んだと、番犬所の神官から聞かされたのは今朝のことだ。
 
幼いころ、1年間だけ彼から魔戒騎士の修行を受けた。
 
強い人だったが、ホラーと戦い死んだらしい。
 
 
魔戒騎士の死因なんて大抵そんなものだ。
驚くことも無かった。
 
自分もいつかそうやって死ぬだろう。
 
父の死を目の当たりにしたとき、幼かったなりに覚悟は決めている。
 
 
 
どんなに強い魔戒騎士でもいずれ死ぬのだ。
 
 
―――・・・・
 
 
「坊主、・・・お前は強くなるだろうよ。
 いずれ黄金騎士ガロの称号を賜るに相応しい者となるだろう。
 だけど、これだけは言わせてもらう。
 お前には魔戒騎士は向いていない。」
 
ケンギにいわれた言葉に怪訝な表情で問いかける。
 
「?・・・・向いていないのに、強くなれるものですか?」
 
 
「ああ、なれるぞ。
 そういう天運だからな。お前は。」
 
「・・・父がガロだったからですか・・・?」
 
ずっとそういわれ続けてきた。
 
父親が強かったから、お前も強いんだと。
 
僕の強さは父の血を受け継いでいるから、と僕が払ってきた努力も、必死で頑張ってきたことも全て笑って否定するのだ。
 
どいつもこいつもそんな奴ばかりだ。
 
「そう思ってるのか?
 駄目だな、まるで。」
 
ケンギは呆れて言った。
 
「お前はなぜ、魔戒騎士になりたい?」
 
 
決まっている。
父の志を継ぎたいからだ。
 
 
「お決まりの文句は聞いていないぞ。
 俺はお前の本心を尋ねている。」
 
 
「・・・・。
・・・・ホラーを全てぶっ殺したいから。」
 
 
そう、それがお前の本音だ、と彼は手を叩いた。
 
「だったら簡単な手がある。
 人間を滅ぼせばいい。
 人間を滅ぼせば、陰我も生まれず、ホラーも捕食する相手がいなければ滅ぶか・・・あるいは共食いをし出すだろう。
 ホラーなんて人間がいなけりゃ、ほっといたって滅ぶのさ。」
 
 
何を言っているんだろう、この男は。
 
僕に何を言わせたいんだ?
 
目の前の男に心底いらついて、睨んだ。
 
「・・・そんなこと。
 あなたは人間が好きではないのですか?」
 
「ああ、嫌いだね!
 自然は壊すし、自分の勝手で陰我を抱いて他人を殺す。
 歴史上殺し合いばかりさ。
 人間なんて、ご大層なものじゃないだろう?
 俺たちにとってはホラーと大して変わらないもんだ。」
 
軽口を叩く男に、吐き気すら覚える。
 
鋼牙は持論が揺らいでいくのを感じていた。
 
『守りしもの』となれ・・・・それが父の願いだったのに。
 
 
「あなただって、人間です。」
 
 
「認めたな?」
 
鋼牙の言葉に、ケンギは罠にかかった獲物を見るような目を向けた。
 
「ホラーと人間に大差なんてない、と。
 お前の憎しみや殺意は、たとえホラーを全て滅ぼしたとしてもとどまることなどないぞ?
 やめておけ、むしろお前の首を絞めるだけだ。」
 
 
「では!
・・・では何のために僕らは戦うのですか!?」
 
 
ホラーとの戦いに終わりがないのなら・・・何のために?
 
父は何のために戦って死んだのか。
 
 
「さあな。
 それが分かっているなら、俺も苦労などないさ。
 しかしな・・・俺は残したいのさ。」
 
 
「何をですか・・・?」
 
 
立ち尽くして、憔悴した声で尋ねる鋼牙に構わず彼は横になる。
 
 
「俺の娘に。
 強く、気高い父親の姿を。
 そして、それは決して憎しみのままにホラー狩る姿ではないと思っている。
 だったら、俺は人を守って死にたい。」
 
草むらに寝転がり、ケンギは天に向かって語った。
 
・・・・・。
 
鋼牙はすぐ足元にあったタンポポの綿毛を茎からちぎって、息を吹きかける。
 
美しい綿毛が宙を舞って風に流れていく。
 
いくつも。
 
     いくつも。
 
「・・・手向けです。
 せめてもの・・・。」
 
鋼牙の言葉を聴き、ケンギは美しい光景に目を細めて満足したかのように瞼を閉じた。
 
 
 
「鋼牙・・・、焦るんじゃない。
 お前が死ぬのはまだずっと先のことだ。
 それまでには・・・きっと答えが見つかるさ・・・・。
 お前だけの答えがな・・・。」
 
 
 
―――・・・・
 
 
 
「・・・鋼牙様・・・。」
 
ずぶ濡れの体を拭くものおざなりに、自室へと続く階段に足をかける。
 
心配そうな執事の視線が背中に刺さった。
 
 
部屋に入って、ずっしりと重くなったコートをあてつけのように床に叩き付けた。
 
 
・・・・やってられるか・・!
 
 
《・・・鋼牙、今日はもう何も考えるな。
 さっさと寝ろ。》
 
つい先刻まで一言もしゃべらなかったザルバが呟くように言った。
 
それすらも腹立たしくなり、乱暴に中指から抜き取ると箱に戻す。
 
 
 
 
 
答えなんて何も見えない・・・・。
 
生きる意味など分からない・・・・!!
 
なあ、教えてくれ!
 
あんたはそれでも幸せだったのか!?
 
愛するものを置いて死んで、それで「残す」だって!?
 
・・・・ふざけやがって!!
 
残された奴の気持ちがあんたに分かるか・・!?
 
後悔と!
    自分を殺したいほどの贖罪に溺れる気持ちが!
 
 
 
 
・・・・・俺は生きてやる・・・!
 
何が何でも生きてやる・・!!
 
「死ぬ」ってことは「負ける」ということだ。
 
 
俺は何者にも負けたくない!
 
 
そのプライドだけが、俺を生かす・・・!!
 
 
ずっと雨ならいい。
 
このまま、朝など来なければいい。
 
 
目の前に広がるのは黒よりも濃い闇色だ。
 
「朝」の到来など、もう待たない。
 
 
「くそっ・・・。
・・・・なのに・・・・、なんでこんな時に限って優しい雨が・・・・・ッ」
 
 
 
 
もう、二度と泣かないと決めた鋼牙の代わりに・・・しとしとと降り注ぐ、雨は・・・まるで慰めているかのようだった。
 
 
 
・・・・・・
 
 
 
「・・・鋼牙様、今はきっと暗闇の中にいるんです。
 でもきっと・・・・いつか、きっと・・・、朝は来ます。
 必ず・・・・。
 かならず・・・。」
 
雨の景色を映す窓に向かって、執事は請うように願った。
 
「朝」の到来を。
 
彼を救ってくれる、誰かの存在を。
 
・・・・願わずにはいられなかった。
 
この残酷な世界で、あとどれくらいの希望を持つことが赦されるだろう・・・。
 
 
 
 
 
end
 
 
鋼牙がカオルと出会う前の話。
 
救いが無いですね。
きっと鋼牙自身、一生「救い」など無いと思っていたでしょうから・・・この頃は。
ゴンザも辛かった・・・。
 
大河を失ってから、ずっと一人で頑張ってきた鋼牙。
ケンギとのことは映画版での後付け設定かも知れませんが、彼の存在に救われたこともあったはずです。
父とは違った意味で。
 
その彼すらも失ったとき、彼だったら何を思うだろう・・・。私だったら何を思うだろう。
そんなことを考えて書きました。
 
鋼牙はこの後、カオルと出会い「守りしもの」としての使命に目覚め、後に烈花すらも救うのですが、こんな風に苦しいときがあったからこそ出来た事だと思います・・・。
 
 
カオルの存在がどれほど大きかったことか。
 
 
 

拍手[19回]

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Comments
もえ様、初めまして☆
どうも、一二三です!
拍手とメッセージありがとですv

そうなんですよ!牙狼サイトさんてあんまり無くて・・・・一二三寂しい・゚・(ノД`)
これからも来て、慰めて下さると嬉しいです!


鋼牙は強いコ、負けないコ♪
彼は絶望を受け入れるのではなく立ち向かっていくタイプだと思うので、やっぱりバラゴとは違うんですよね。
バラゴはバラゴで苦悩があったのですが、その辺りは小説「牙狼~暗黒魔戒騎士編」を読んでいただけると、幸いです!

↑ さりげなく宣伝www
Posted by 一二三(管理人)です - 2010.11.23,Tue 09:52:39 / Edit
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