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Posted by 一二三 - 2013.02.01,Fri

亀更新すいません!!;
とりあえず生きております、一二三です(;´Д`)

今回はだらだらとした話になってしまいすいません・・・と先にお詫びさせてくださいませ。
しかも季節外れなネタ・・・!(>д<;)ゴメンナサイ!

メール返信も滞ってて・・・
お詫びすることばかりですいません。
メッセージくださった皆様ほんとうにありがとうございます。

長くなりましたが、小説本編へは「つづき」クリックにてどうぞよろしくお願いします。







 
 


満員電車の車窓から垣間見た夜空に咲く大輪の華。
 
それはすぐに高層ビルに隠れてしまい、ほんの一瞬しか見ることは叶わなかった。
 
車内には華やかな浴衣で身を包んだ女性や、兵児帯をひらひらとさせて両親におんぶをせがむ子供の姿が目立つ。
 
行く先は皆同じようで、花火大会が催されている河川敷にほど近い駅でごっそりと降車した。
 
途端に人気のなくなる車内で、どうにかもう一瞬だけでも花火が見れないかと車窓を覗き込む。
 
「・・・花火、一緒に見たいなぁ・・・。」
 
おそらくは叶う事の無い期待を吐息のように吐き出した。
 
 
 
 
 
『手持ちな気持ち』
 
 
 
 
 
「ただいま~。」
 
「カオル様、お帰りなさいませ。」
 
仕事の打ち合わせでいつもより帰りが遅くなった私を、冴島邸の優しい光とゴンザさんが出迎えてくれる。
 
ダイニングから漂う夕食の匂いに、お腹がぐ~っと鳴った。
私が今更感じるまでもなく、胃袋はここが私の家だと知っているみたい。
 
「さぁさ、お腹が空いたでしょう。
 夕食にいたしましょう。」
 
ダイニングテーブルに着きながら、せっせと一人分の配膳を進めるゴンザさんに訊ねる。
 
「鋼牙はもう出たの?」
 
「ええ、つい先程指令書が届きましたので。
 カオル様とちょうど入れ違いに出て行かれましたよ。」
 
「そっかぁ~。」
 
ぼんやりと応えながら時計を見ると時刻はもう21時をまわっていた。
 
「あ!ねぇ、ゴンザさん。
 今日ね、電車で帰ってる時に花火が見えたんだよ。」
 
「ああ、そういえば今日は花火大会の日でしたね。
 残念でございますね。
 指令書が無ければ鋼牙様とご一緒に見に行けたでしょうに。」
 
目の前のチキンに差し込みかけたナイフが止まる。
 
うん・・・一週間前、私もそう思ったよ。
 
一緒に行けたらいい、と。
 
「・・・・。」
 
「カオル様?」
 
「ゴンザさん、鋼牙は・・・人混みが嫌いなのかな?それとも花火が嫌いなのかな?」
 
一週間前、近くの河川敷で大きな花火大会があるって知った私は、やっぱり鋼牙と一緒に見れたらいいなって思った。
 
だから、一緒に行きたいと誘うつもりで鋼牙に「もうすぐ花火大会があるんだよ!」と話を振った。
でもその時、彼が見せた表情に「一緒に行こう」と言葉を続けることは叶わなかった。
 
いつものように呆れた表情でも、興味のなさそうな顏でもないそれにはどんな意味があったのか。
 
 
「・・・確かに鋼牙様は人混みがお好きではありませんが・・。
 花火も、好き嫌いという感覚は無いと思います。
 あえて言うならカオル様がお喜びになるなら、どこへなりとお付き合いするかと。」
 
「それって、鋼牙が花火好きじゃなくても私が言うなら付き合うってこと?」
 
「あぁ、いや!ええと・・・なにも嫌々とかそういう意味ではございませんよ!」
 
ゴンザさんは慌てて両手を振った。
 
「そうですな、きっと鋼牙様はカオル様の笑顔が見られれば嬉しいのだと思います。」
 
にっこりと告げるゴンザさんには悪いと思ったけれど、私はその言葉に酷く落胆した。
 
やっぱり鋼牙はそうなんだ。
いつもそう・・・。
 
それはきっととても“素敵なこと”・・・なのよね。
 
相手を思って、相手の笑顔が見たくて・・・行動すること。
それはとても素敵なことなのだろう。
 
「あなたの幸せはどこにあるの?」と聞けば、きっと鋼牙は「それは私が幸せであること」と答えると思う。
 
 
それが『愛』だというなら、もちろんそうだとも思う。
 
でも、私にはそれが時々とても怖い。
鋼牙は物事に「好き」や「嫌い」だと思うことがあまり無い。
それはまるで彼が空っぽであるような気がするのだ。
 
どんなものでも何かに執着するってことは、生きる上での根幹だと思ってる。
 
鋼牙と一緒にいるとき時折感じる、空気を掴む様な感触。
確かにあなたはここにいるのに。
確かにあなたに触れているのに。
 
私の手は本当に鋼牙を掴めているんだろうか、と。
 
時々とても怖くなる。
 
 
もっと色々なものに興味をもってほしい、もっと世界に触れてほしい。
もっと『自分』というものに執着してほしいと願うのはエゴだろうか。
 
「やだなぁ、結局自分のことばかり・・・」
 
鋼牙のことを想っているつもりになっているだけ。
鋼牙からしてみれば“大きな御世話”なのかもしれない。
彼がそれを望まない以上、私の独りよがりに過ぎないのに。
 
 
夕食を終えて自室に戻り、ベッドに寝そべってただ悶々と過ごした。
 
・・・何となく絵を描く気も起きない。
 
普段なら気にならない時計の音も、やけにカチカチと耳に響く。
 
ああ、うるさいなぁと首を捻ったその時、窓の外から聞き慣れない音が届いた。
 
それはバチバチと火薬が弾ける音。
 
窓辺に立って下を覗き込むと、鋼牙の白い背中が座り込んでいるのが見えた。
彼の手元から橙色の火柱が立っている。
 
あれは・・・!
 
 
大慌てで部屋を飛び出し階段を駆け下りて玄関を押しあけると、まるでそうなることを知っていたように鋼牙が私をふり仰いだ。
 
 
「・・・岩戸が開いたな。」
 
声音から彼が茶化しているとすぐに分かる。
 
別に引きこもってたわけじゃないもん!
 
言い返したい気持ちをまるっと押し込めて、何とかひねり出した言葉はあまりにも足らないものだった。
 
「どうして・・・?」
 
「・・・今日、花火を見に行けなかったからな。」
 
ほら、と手持ち花火のセットを持ち上げて見せる鋼牙。
 
それって私へのお土産?
・・・一週間前した話、憶えててくれたの?
 
「え・・・でも、約束してなかったし・・・」
 
一緒に行こう、なんて言わなかった。
 
「そうだが、・・・行きたかったんだろう?」
 
行きたかったよ。
行きたかったけど、でも。
 
そうじゃない。
そうじゃなくて・・・
 
「拗ねてないでやれ。」
 
まごついている私に、鋼牙は一本の花火を押し付けた。
 
玄関口の階段に座っている彼にならってその隣に腰かけると、鋼牙は普通のライターの火を差し出す。
 
「ちょっと、ライター危ないよ?
 普通はろうそくを立ててやるんだよ。」
 
「そうなのか?」
 
「ちょっと待って・・・えっと・・・あった!」
 
手持ち花火の袋を探ると、思った通り小さくて細い蝋燭が一本入っていた。
 
「ライター貸して。」
 
火を灯した蝋燭のロウを階段の段差に少し垂らして、そこに立てる。
近くにあったバケツに水を張り、これで準備完了。
 
鋼牙にライターを返しながら、ふと疑問に思う。
 
「・・・あれ?でもなんで普通のライター持ってるの?」
 
タバコ吸わないのに。
 
「・・・・。
 昔の話だ。」
 
え!?と思わず小言が出かけたのを、彼は私の口に人差し指をあてて遮った。
 
「聞いてもひとつも良いこと無いから聞くな。」
 
そのまま目線を逸らせて2本目の花火を手にとる鋼牙に、私も深く追求するのをやめる。
本当は急に狭まった距離に心臓が跳ねて何も言えなくなっちゃったんだけど。
 
鋼牙からタバコの匂いがしたことは一度も無い。
彼の言う通り、昔の話なんだろう。
 
渡された花火に蝋燭の火をつけると、勢いよく鮮やかな火花が走った。
 
夜の闇を散らばる火は緑色で、魔導火を身に纏っているガロを彷彿とさせる。
 
「きれい・・・」
 
こぼれる笑顔に鋼牙が隣でくすりと笑った。
 
子供みたい・・・かな?///
 
辺りを覆う煙と、火薬が燃える匂いが鼻をつく。
でもそんな欠点を補って余りある美しさが、火にはあった。
 
「見て見て!鋼牙!」
 
花火でクルリと円を描くと目に光の残像が残る。
 
「花火で絵が描ける~!」
 
「すぐ消えるだろう。」
 
呆れたように言われた。
 
「でも2本同時に持てばいけるかも♪」
 
「やめとけ。
 お前はドジなんだから危なっかしい。」
 
 
たった二人きりの花火。
煙のむこうの彼はおぼろげだけれど、橙の火に照らされて穏やかな表情に見えた。
 
鋼牙も楽しんでるのかな?
 
縦置きの噴出花火を少し離れた位置で鋼牙が着火する。
 
勢いよく立ち上る火の粉に私は「わぁ~!」と手を叩いて喜ぶ。
『桜吹雪』と名づけられたそれは、名の通りピンク色の鮮やかな火をバチバチと咲かせて夜の闇に消えていった。
 
チラリと鋼牙の表情を窺うと、彼は一週間前花火の話を持ち出した時と同じ顔をしていた。
 
花火の光を反射する瞳は火の中に別の何かを見ているような気がする。
 
じっと見つめている私の視線に気づいた鋼牙に、逆に見返されそうになって慌てて目を逸らせた。
「なんだ」と聞かれて上手く答えられる言葉が浮かばなかったから・・・。
 
そんな私をどう思ったのかは分からないけれど、鋼牙は徐に口を開いた。
 
「・・・・火を見ると、人は失った何かを思い出すらしい。」
 
「“失った何か”?」
 
「その人にとって大切な何か。」
 
「・・・鋼牙は何を思い出すの?」
 
「さぁ・・・何だろうな。」
 
「・・・・。」
 
分かっているくせにとぼける鋼牙はめずらしい。
 
きっとあまり良い話題じゃないのだろう。
せっかくの花火に水を差したくない、と彼なりに思っているのかもしれない。
 
それならば・・・・
 
「じゃあ、今度からはこの日のことを思い出して。」
 
「私とのことを。」
 
 
言って恥ずかしくなって、誤魔化すようにはにかんだ。
うつったように鋼牙も少し笑う。
 
彼にとって花火が嫌な思い出にならないと良い。
そう願った。
 
「・・・どうせならデカい花火にすればよかった。」
 
「ううん、この方がずっと素敵。」
 
 
隣に立つ鋼牙に、そっと指を重ねて手を繋ぐ。
 
私の手をぎゅっと握り返した彼が、目を合わせることもなく告げた。
 
 
「・・・お前のことだけは失いたくない。」
 
鋼牙は物事に執着したりしないと思ってた。
 
「いつの日か、お前を思い出すなんてことしたくない。」
 
鋼牙は生きるために自分以外の何かを必要としたりしないと思ってた。
 
でも、そうじゃないんだよね。
 
私があなたを必要とするのと同じくらい、あなたも私を・・・。
 
「うん・・・。
 思い出す必要なんてないくらい、そばに居てあげる。」
 
 
「それに・・・
 私がいなかったら、鋼牙寂しくて泣いちゃうでしょ?」
 
むっとする強がりな彼。
 
「・・・大きなお世話だ。」
 
「大きなお世話いたしますとも。」
 
背筋をのばしてスンと言い返すと、鋼牙は眉間に皺を寄せた。
 
「何だ、俺ばかりが子供みたいだ。
・・・お前こそ拗ねて引きこもっていたくせに。」
 
だって一緒に大きな花火見たかったんだもの。
 
「ねぇ、訊いてもいい?
この花火はほんとにただの埋め合わせ?」
 
私を喜ばすためだけのものなの?
 
「ただ、俺が。お前と花火を見たいと思っただけだ。」
 
鋼牙の言葉にぽかんとしてしまった。
それはずっと欲しかった言葉で、まさかこんなにあっさりと手に入るなんて思わなかったから。
 
「不満か?」
 
 
「そんなわけない!」
 
気付けばオーバーなくらい首を横に振って答えていた。
 
そんな自分が恥ずかしくて、鋼牙がそう思ってくれたことが嬉しくて、顔に火がついたみたいに熱い。
嬉しくて泣いちゃいそうだった。
 
言葉にできない気持ちを伝えたくて、ぎゅっと鋼牙に抱きつく。
 
 
「次は・・・大きな花火、見に行こう。」
 
頭上から聞こえてきた声は彼らしくぶっきら棒だけど、顔を見なくても優しい表情をしてるんだと分かる。
 
「きっとだよ?」
 
「ああ。」
 
しがみついたまま見上げると穏やかな瞳とかち合った。
 
その光は花火よりも炎よりも美しくて、凛々しくて・・・あたたかい。
 
この光をもっとずっと見ていたくて私はいつも我儘を言ってしまう。
 
 
「今夜は鋼牙の部屋に行ってもいい?」
 
 
その瞳をスケッチに描き残しておきたいから。

来年、大きな花火を見に行った時、この日のことを思い出せるように。
 
 
 
 

End

オチが行方不明・・・orz
久々のUPがこんな出来ですいません;
実は夏に書き始めて放置→サルベージ→ここ2週間オチで悩んだけれど何も浮かばなくてUP・・・(´;ω;`)
結局ダラダラとした話に・・・。
だめですねー、しっかりしたモノが書けなくて。
そろそろパンチのあるヤツが書きたいです。
多分、次回UPするものは少々コンソメパンチ☆な感じになると思いますww
熟年夫婦のようなラブラブに飽きてきたので・・・!(暴露)
 
余談ですがMAKAISENKIを見返すたびに、熟年夫婦な鋼カオが正道なような気がしてギャップに苦しみます・・・;
所詮一二三にはハラハラ話しか書けないのかぁー・・・(´;ω;`)る~。
 
 
 
 

拍手[47回]

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Comments
ノックアウト!
------------------------------------------------------------
「鋼牙は物事に「好き」や「嫌い」だと思うことがあまり無い。
それはまるで彼が空っぽであるような気がするのだ。
------------------------------------------------------------

はぅっ!

------------------------------------------------------------
鋼牙と一緒にいるとき時折感じる、空気を掴む様な感触。
------------------------------------------------------------

ぐふっ!

カウンターパンチを食らったような気がします~~~
(鼻血ダラダラ~ でも、顔はニヤニヤ~)

熟年夫婦。
正道には違いないのでしょうが… えぇもう、本家様が一番なのでしょうが、気持ち的には拒みたい…
イヤイヤイヤです~~~

あれはあれで置いときまして、一二三様には、ハラハラ話をい~っぱい書いていただきたいと思います!

季節外れかもしれませんが、煙草や火(の中の失った何か)のエピソードなど、ミステリアスな鋼牙が散りばめられていて、とっても素敵な作品でした。
ありがとうございました!
Posted by selfish - 2013.02.02,Sat 15:02:21 / Edit
Re:ノックアウト!
selfish様、こちらこそありがとうございます!
毎回UPの度にコメント頂けてどれほど心強いか・・・!(o´д人))゚

一二三もまた必ず遊びに伺います!

ハラハラ話に貴重な一票ありがとうございますw
もっとドキドキしたい・・・!゜*。(*´Д`)。*°ハアハア
という気分で、これからも邁進してまいりますね☆
Posted by - 2013.02.11 at 22:32
飢えてたの・・・
ずっとずっと一二三さんのおはなしに飢えてたのよぉ~
ああ、それなのに、UPに気付くのに遅れたなんて・・・
なるべく早めにメール致します。
それでは。 (^^ゞ
Posted by なな - 2013.02.02,Sat 18:49:14 / Edit
Re:飢えてたの・・・
なな様、メッセージありがとうございます!
一二三めも飢えております・・・!ヽ(゚Д゚)ノ

なな様の新作、待ち焦がれてますよ~~v
感想文が追いついてませんが、いつもチェックしてますww

日記見ると忙しそうなので、心配・・・。゜(゜´Д`゜)゜。
お互い身体には気をつけて、まったりいきましょうね!
Posted by - 2013.02.11 at 22:35
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