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Posted by 一二三 - 2012.12.10,Mon
連作「睡」~第二夜~
 
 
続きモノの作品の2話目になります。
一話から読む方は右のリンクから♪ → ■ 
 
第二夜「迷夢」本編へは「つづき」クリックでどうぞ。
 
 
※お知らせ※
12.09UP予定でしたが、モノは出来てたんですが忍者ツールの管理ページで障害が発生しておりアクセス不可でUP出来ませんでした(o´д人))゚
お待ちいただいていた皆様、誠に申し訳ございませんでした!



 


 
 
夢の中で君に逢えるならそれで満足だった。
 
恨み言でもいい。
君の声をまた聞けるのならそれが醒めない悪夢だとしても幸福だった。
 
だって目覚めた世界に君はもうどこにもいないのだから。
 
 
どっちが悪夢かって話だ。

 
 

 
『睡』
~第二夜「迷夢」~

 
 
 
 
今だ重たい瞼を光が強く殴ってくる。
 
覚醒を促す声を煩わしく思い、無意識のまま布団に潜り込もうとすると手甲からシルヴァが咎めた。
 
《ゼロ!》
 
「~~~うるさいなぁ・・・あと5分・・・」
 
窓から差し込む光に、ゴロリと背を向けたその時―――
 
背筋に悪寒が走り咄嗟に布団を跳ね除けてベッドから飛び下りた!
 
ぼすっ!という音と共に振り下ろされたのは朱塗りの鞘。
 
飛び出そうな心臓を掌で押さえながら、状況をよくよく見ると仏頂面の“ヤツ”が鞘の先をベッドに突き立てたままこちらを睨んでいた。
 
「あっぶねぇなこの野郎!」
 
「・・・素晴らしい反射神経だ。
 どうやら体は鈍っていないようだな。」
 
「よかった~!零君目が覚めて!」
 
・・・病室のベッドを挟んで向こう側にリア充がいた。
鋼牙とカオルちゃんだ。
 
心底、「帰れよ!」と悪態つきたい俺の胸中をはかり知る者はいないだろう。
今しがた静香の夢をみた俺にはあまりにも頭が重い。
しかし目の前の人物は紛れもない恩人・・・。
貸しのある相手に大きな態度をとれるはずがない。
 
やさぐれまくった台詞をどうにか喉の奥に押し込もうと努力したが、それでも多少の小言は漏れる。
 
「・・・いい夢みてたのに・・。」
 
だが稀代の黄金騎士様はそんな俺のナイーブで繊細なガラスのハートを推し量れるお方ではなかった。
 
「さっさと顔でも洗ってこい。
たっぷり惰眠を貪ったのだからキリキリ働いてもらうぞ。
 まだ仕事は終わっていないんだ。」
 
ピシャリと返された言葉で現実が帰ってきた。
これほど目が覚める相手もそうはいないだろう。
 
「へいへい、分かってますよ。」
 
俺を助けるのを優先して、ホラー・エルムを取り逃がしたこともちゃぁんと分かってますよ。
 
魔戒騎士ならどちらを優先すべきか明白なのに、コイツは俺を助けたんだ。
 
・・・おせっかいな甘ちゃんめ。
 
夢の中で見たことをあえて問い詰めたりしないし、俺が助けてやったんだと偉ぶることも無い。
 
癇に障るが、今はその心遣いが助かる。
 
「メンズビ○レあるかしら・・・俺のたまご肌が・・・」
 
両頬をさすりながら個室の洗面台に向かっていると、カオルちゃんが半透明のプラスチックボトルをほれと差し出してきた。
 
「零君、台所用洗剤ならここにあるよ。」
 
「カオルちゃんそういう冗談やめてくれる!?;」
 
「・・・悪いな、零。
 カオルはゆで卵を台所用洗剤で洗うんだ。」
 
そんな衝撃的な事実知りたくなかった・・・!!
 
 
 
――――・・・
 

その後、零はあっさりと退院手続きを済ませると苺ミルクシェイクを片手に病院を出る。
 
人気のない道を選びながら颯爽と歩く白と黒の背中。
二人が並んで歩く姿を後ろからカオルは眺めながら、その頼りがいのある背中に気持ちの余裕を感じていた。
 
どんなに強く大きな敵が現れようとも、この二人が手を組めば必ず勝利をおさめる。
 
時に互いを邪険に扱ったり、憎まれ口を叩きあったりはするものの、両者には絶対の信頼が存在しているとカオルは知っていた。
 
 

「零。ホラー・エルムのことだが、夢の中でヤツの姿を見たか?」

 
「いや。
 というより俺にはあれが夢だ、っていう実感もなかった。
 お前が現れるまでな。」
 
真剣に仕事の話をする鋼牙と零についていきながら、カオルはぼんやりと耳を傾ける。
 
《妙だな。
 エルムはいつでもお前を殺せたはずなのにそうしなかった。
 他の騎士達にしてもそうだ。》
 
《確かに。
 彼は目覚めてから一度も食事をしていないわ。》
 
ザルバの指摘にシルヴァも同調を示す。
零の頭に当然の疑問が湧いた。
 
「じゃあ一体何のために魔戒騎士を襲ってるっていうんだ?
 殺すためでも食べるためでもないなら、他に何の目的が・・・」
 
 
「“観察”・・・じゃないかな?」
 
え?と二人が振り返り、声の主を見つめた。
 
魔戒騎士二人から同時に鋭い視線を向けられて、カオルは少し身を疎めながらもそろそろと言葉をこぼす。
 
「えっと・・・ほら、小さな子供が昆虫採集したりするでしょ?
 もちろん食べるためじゃないし、殺す訳じゃない。
 収集して眺めて・・・って・・。」
 
「しゅうしゅう!?」
 
うへぇと零が顔をしかめた。
 
「悪趣味だな・・・!
 ホラーがそんな無意味なことするとは思えないけど・・・なぁ、鋼牙。」
 
「・・・・。」
 
しかし鋼牙にはカオルの答えがあながち間違いではないように思えた。
 
零の夢の中に入った時の、あの感覚。
何かの気配を確かに感じた。
 
もしもホラーが観察していたとしたら、その気配だったのではないだろうか。
 
魔戒騎士を夢という限られた箱庭に閉じ込め、行動や反応を覗う。
 
夢を操ることができるエルムなら、その騎士にとって障害となるものを自由に配置することもできるだろう。
零にとって静香がそれだったように。
 
そして対象がどう行動するのか観察する。
さながら『箱庭実験』のようなものだったとしたら・・・。
 
だが、そんなことをする意義が分からない。
ホラーにとって何のメリットがあるのだろう。
 
ただ痛ぶるためか、退屈しのぎの玩具だとでも思っているのか。
 
「鋼牙?」
 
「そういう可能性も無くはないと思う。」
 
「お前にしちゃ随分と曖昧な見解だな。
 要は今回の敵はよっぽど得体が知れないってことか。」
 
「まっ、ひとつだけはっきりしてることはあるぜ?」
 
そう言って零はニヤリと笑った。
 
「俺もお前も今日から寝るの禁止だな。」
 
零は分かるが何故俺も・・・と言いかけた口を噤む。
 
あれだけ零の夢で立ち回っておいて、ホラーに目を付けられないワケがない。
ヤツを倒すまでは安眠は出来ないということだ。
 
ともかく、敵の情報は多いに越したことはない。
目的が分からないのなら尚更だ。
ヤツに対抗する手段を見つけない限りは安易に眠るのは自殺行為にも等しい。
 
魔界道を利用してひとまず北の別邸に戻ることにした。
 
 
 
――――・・・
 
 
冴島邸の書庫を眺めながら零が感嘆の息を漏らす。
 
「・・・いつ見ても壮観だよなぁ。」
 
古めかしい革表紙をめくりながら、かつてホラー・エルムが復活した時の資料を探していると、ゲホゲホと咳払いをしながらゴンザが現れた。
 
「鋼牙様!ありましたありました!
 大変古い書物で随分と埃も積もっておりましたが、確かにホラー・エルムを封印した時のものです!」
 
「へぇ、鋼牙の御先祖様に封印されたのか。」
 
机に広げられた黄ばんだページは、装丁が朽ち果てておりバラリと散らばった。
 
カオルが興味深そうに覗き込む。
 
「すごい!変わった文字ね。
 これが魔界文字?」
 
「旧魔界語ですな。」
 
「古っ!」
 
「・・・ザルバ、解読できるか?」
 
左の中指をページにかざして尋ねると、魔導輪は眉根を寄せた。
 
《無茶言うな。
 こんな掠れてちゃ、断片しか読めないぜ。
 “ホラー・エルムは夢に現れ夢に消える”
“夢に打ち勝て”・・・かろうじて文章で解読できるのはこれくらいだ。》
 
「たぁ~!それじゃ役に立たないな。
 神官にもらった薬を俺も鋼牙も飲んで、それでなんとか二対一に持ち込むしか・・・。」
 
「断る。」
 
「は?」
 
「お前に俺の頭の中を歩き回られたくない。」
 
「諦めろ。 
永眠するよかマシだろ。
 お前こそ人の頭ン中、土足で踏み込んどいてよく言うぜ。」
 
その時、俺と零の会話を黙って聞き流していたカオルが嬉々として手を叩いた。
 
「じゃあ、今夜は零君泊まっていくのね!」
 
・・・なぜ嬉しそうなんだ・・・。
 
胸の中がもやっとしたが、この時の俺はまだ知る由も無かった。
まさかこんなことになるとは・・・。
 
 

―――・・・
 
 

「・・・おい、なんでこんなことになっているんだ。」
 
俺はこの日最大の苛立ちと嫌悪感を顕わにして天井に向かって呟いた。
 
この日は零がホラー・エルムの資料を見に家に来て、なんだかんだで二人で仕事をこなすことになり、夕食を共にしてその後各々風呂に入った。
 
そこまでは、まぁ・・・許容の範囲内だ。
 
カオルと零の仲良さげなやり取りに多少の青筋を立てたことは認める。
ガラス製のコップを握り割りそうになったこともまぁ、この際認める。
 
さぁ、これからホラーを倒すために寝るぞ、となったその時、問題が起こった。
 
 
「私子供の頃から夢だったんだよね~!」
 
右横でカオルが鼻歌でも歌いだしそうに言った。
 
「いいよなーこういうの!」
 
零が楽しそうに答えた。
 
左横で。
 
・・・ちょっとまて、ふざけるな。
 
 
「なんで川の字で寝るんだ!!」
 
 
 

 
 
 
 
――・・・・To be continued

なんかサーバーが重くて管理ページに入れなくてUP遅くなりました;
復帰しょっぱなから出鼻を挫かれた感満載でお届けしておりますw
 
第二夜は途中からギャグに・・!w
しかし何も話が進まなかったね(;´Д`)
これちゃんと次で終わるのかしら・・・・汗
次回はいよいよエルムとご対面。お楽しみに☆
 
 

拍手[50回]

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Comments
いい子にして待ってます!
「睡」~第一夜~も、胸をキュ~って握りつぶされそうで、ものすごく大好物な感じのお話でしたが、「睡」~第二夜~は、楽しくって面白くって、これまた素敵でした!

「ゆで卵を台所用洗剤で洗う」ってサイコ~です!! あははは~

「何も話が進まない」って、そんなに慌てて話を進めなていただかなくてもこちらは構わないんですけど。
一二三様ワールドをゆっくり味わいますので…
Posted by selfish - 2012.12.11,Tue 00:12:11 / Edit
Re:いい子にして待ってます!
selfish様、コメントありがとうございます!
一二三ワールドちゃんと機能しているでしょうか?ドキドキ(;´Д`)
多分、書いてる本人が誰よりも手探りな感じですw
最近自分らしい文章ってどんなだっけ?と悩んだりもしましたが、そういえば自分には守るべきスタイルもルールなんて呼べるものも無かったな、と。
開き直って新しい境地を目指すのも一興、と頑張っていきます。
また読んで頂けると嬉しいです。
Posted by - 2012.12.15 at 15:07
夢は叶えるものさ!Ъ☆ビシッ
(´▽`)(;‐△‐;)(´▽`) ステキなヒき(次回への続き)でしたっ(≧∇≦)┛シリアスもあり 腰打ったもあり… が 牙狼クオリティっすよね♪
Posted by クロ - 2012.12.15,Sat 00:37:53 / Edit
Re:夢は叶えるものさ!Ъ☆ビシッ
クロ様、メッセージありがとうございます!
素敵な顔文字笑いました!ww
続きも読んで頂けると嬉しいです。
Posted by - 2012.12.15 at 15:27
ぶわっはっは (^◇^)
一二三さんだ、一二三さんだ、一二三さんだ~
(大事な事なので三度言いました)
真面目に始まって、最後の川の字就寝。
バッチシです。
やっぱ、一二三さんワールドはナイスです。
Posted by なな - 2012.12.15,Sat 16:19:20 / Edit
Re:ぶわっはっは (^◇^)
なな様、メッセージありがとうございます~!

こうしてブログを通じてやり取りをしていると、ガロライフに帰ってきたんだなぁ~と思えてなんだかホッとしますv
これからも頑張っていきますので、よろしくお付き合いのほどお願いいたします☆
また諸々落ち着きましたら、そちらにもお伺いしますねv
Posted by - 2012.12.16 at 22:02
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