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Posted by 一二三 - 2011.09.11,Sun
※この小説は前回記事の小説 『閑岱運動会』の後編です。

前編を読んでいない方は、そちらからどうぞv


「つづき」クリックで後編へいけます。

  
 
 
≪ はーい!怒涛の展開でしたね!
 続いて第2種目へ行きたいと思いまーす!≫
 
≪はい!零さんはとってもかっこよかったです!!≫
 
≪暁くんはゼロしか見てませんでした・・・!;
 それより、第2種目は“仮装レース”です!
 ちなみにこれは二人三脚で行っていただきます!≫
 
 
 
「おい、二人三脚だってよ。
 パートナー決めなきゃな。」
 
「じゃあ、俺はカオルちゃんと~~♪」
 
零がそのままお得意の軽口を続けようとしたその時、ゴンザの眼鏡がキラリと鋭く光った。
 
「だまらっしゃい、小童が。
 鋼牙様とカオル様が組むに決まってます・・!!」
 
「ゴンザ・・・?;」
 
「ゴンザさん・・・なんか怖い・・・;」
 
ゴンザの迫力に俺もカオルも圧倒される。
 
 
「鈴!にぃとやるか!」
 
翼が名誉挽回しようと、鈴に提案するが・・・
 
「ヤダ!ほんとは鋼牙が良いけど零でいい。」
 
「やだ、だと!?」
 
「俺でいいってどういうこと!?;」
 
《ほんと、失礼な女ばっかりね!》
 
少々の混乱はあったものの結果的に、鈴と零が組むことになったらしい。
 
「なんだよ~~、じゃあ私は翼とか。
 まーよろしくな。」
 
「えっ!?///あ・・・よ、ろしく・・・たのむ!」
 
《今度こそ、白夜騎士の力をみせてやろうぞ!》
 
 
邪美と翼が組み、これで二人三脚のパートナーが全員決まった。
 



 『閑岱運動会~秋の友情スペシャル☆~後編』
~55999hit御礼リクエスト小説~

 


 
 
≪二人一組になって並んでください。
 仮装レースでは第一ポイントにある紙を見て、そこに書いてあるものに仮装してゴールに行ってもらいます。
 途中第2、第3ポイントにおいてある複数の小物から仮装するものに合うものを選んで、身につけてください。
 その結果~~、仮装に足りないものがあったり!間違ったチョイスをしていると~失格になるので、ご注意ください!≫
 
 
≪スタート地点についたら、パートナーと片足を結んでください。
 俺は零さんと結びたいです!≫
 
 
「うるせぇ!暁!
 俺が誤解されるじゃねーか!!」
 
「暁は零にまだ未練があるって言ってた~。」
 
鈴がにこにこしながら、零と自分の足をくくっている。
 
「子供に何話してんの!?ていうか俺達そういう関係じゃないからね!;」
 
 
翼と邪美のほうを見ると、翼がカチコチになっていた。
 
まぁ・・・翼の気持ちを考えると無理もない。
 
鈴は気を利かせたんだろうが、あいつが空回りして邪美に余計嫌われるんじゃないかと、一抹の不安がよぎる。
 
まぁ、他人のことだ。
 
あまり考えないことにしよう。
 
 
 
「鋼牙、足結ぶね。」
 
カオルが弾む口調で嬉々として紐を結ぶ。
 
「・・・カオルはやったことあるのか?」
 
「うん!学生の時にね。
 鋼牙は初めて?」
 
「ああ。」
 
他人と足を結ぶなんて変な競技だ。
 
「タイミングを合わせて足を出さないと、転んじゃうの。
 頑張ろうね!鋼牙。」
 
 
何だかんだでカオルは楽しそうだ。
 
初めての場所だし、本当はつれてくるのに抵抗があったが、杞憂だったようだな。
 
 
≪それでは準備が出来たようですのでスタートの合図をします!
 On your mark,Ready~~ファイッ!!≫
 
 
日向の声で、競技がスタートするが皆踏み出せずにいる。
 
俺達以外の、見知らぬ魔戒騎士見習いや法師のグループは少しずつスタートを始めたようだが、俺はカオルと最初の一歩をどちらにするか相談した。
 
 
「とりあえず、左足から出せ。」
 
「左?まず左から??」
 
「ああ、カオルの左足から、って意味だ。」
 
「左はお茶碗持つほう?」
 
「えっ?あ、ああ・・・。」
 
・・・なんだ?;不安がよぎるんだが・・・。
 
「鋼牙も左足から出すのよね?」
 
・・・ん?
 
 
「Σ違う違う!;
 だから、お前が左出すってことは俺は右だ!」
 
 
「・・・・。・・・・なんで?」
 
「二人三脚だぞ・・!;
 繋いでるのはお前の右足と俺の左足。
 俺も左だしたら、お前こけるだろ・・!;」
 
「あー!私がドジだと思って馬鹿にしてるでしょ!
 大丈夫よ、うん!左ね!絵筆を持つほうよ。」
 
 
「・・・ ・・・・・え?
違う違う!!;
 お前いつから左利きになった!?
 右で絵筆持つだろ。」
 
 
「あー!やっとわかった!うん!OK外側から出せばいいってことよね♪」
 
「ああ・・・そうだ・・・。
 もうどっちでもいい・・・俺がお前に合わせるから・・・。」
 
「じゃあ、せーのでいくよ!」
 
「ああ、せーの・・・」
 
 
「わわっ!!」
 
カオルが前につんのめりそのまま体が倒れそうになるのを抱きとめる。
 
 
「もー!鋼牙ってば、歩幅広すぎ・・!
 足の長さ違うから難しいよ~~~。」
 
抱きとめた拍子にカオルの匂いが鼻腔をくすぐり、俺は居心地が悪くて目線をそらした。
 
「すまん・・・、気をつける。」
 
 
「ねぇ、やっぱり体くっ付けた方がいいよ。
 私が鋼牙の腰辺りに腕を回して、鋼牙は私の肩抱けば、バランスいいんじゃない?」
 
 
「・・・・・・。」
 
・・・
 
・・・・・そんなことできるか!!///
 
 
狼吼えて、どうすべきか思案する。
 
チラリとゴンザの方を伺えば、満面の笑みを浮かべて微笑ましそうにこちらを見ている・・・!
 
おい!!;
 
 
 
「わ、わかった・・・///」
 
ぎゅっとカオルの肩を抱き寄せると、言い出したはずのカオルも体を硬くした。
 
「鋼牙・・・なんか、恥ずかしいね・・・。」
 
そう言って俺の腰におずおずと腕を回す。
 
 
この状況はひたすら恥ずかしいのに、どこか嬉しいと思う自分はどうかしている。
 
 
「と、とにかく走るぞ。」
 
「うん!せーの・・・!」
 
スタートが上手くいくと不思議なくらいスムーズに足が出た。
 
決して速いとはいえないが、カオルが走るときはこんな感じなのか、と思うとあまり気にならない。
 
他人に歩幅を合わせるなんて初めてで新鮮だった。
 
繋がっているのは足首なのに、それだけじゃない気がして・・・・。
 
そのままつまづくこともなく、第一ポイントにたどり着き紙に書かれている仮装を二人で見る。
 
 
「・・・・河童。」
 
「・・・・河童。」
 
 
俺とカオルが困惑している横で、零が何か喚いていた。
 
 
「いやだ~~~!!!サルはいやだぁ~~!!」
 
「零!サルだ!サルになるんだ!!」
 
「いやだ~~~!サルは嫌だーーー!」
 
 
零たちは猿か・・・。
 
仮装レースってこういうものなんだな。
(注※違います。)
 
翼たちはまだスタート出来てないが、大丈夫か??;
 
 
「第2、3ポイントのところに小物がたくさんおいてあるから、その中から河童に必要なものを選ぼう。」
 
二人三脚にも大分慣れてきた。
 
第2ポイントで水かき付の緑のゴム手袋をカオルにはめ、紐のついたプラスチック皿を頭に載せる。
 
「・・・・ねぇ、やっぱり私が河童役なの?」
 
「・・・・俺の河童姿見たいのか?」
 
「ううん;やだ。」
 
 
第3ポイントで先頭のやつらと並ぶ。
 
別に一着にはこだわらない。
もはや順位はどうでもいいから、早く終わらせたかった。
 
 
 
「あとカッパに必要なものって何だと思う?」
 
カオルがたくさんあるアイテムを見て首をかしげる。
 
「カッパ・・・か。
 頭に皿だろ、それから背中に甲羅・・・。」
 
「くちばしもいるよね?」
 
「そうかくちばし・・・。」
 
「ガーガーホイッスルがあるんだけど、これで正解だよね?」
 
「なんだ??ガーガーホイッスルって?」
 
ガーー!
 
・・・・・・。
 
カオルが黄色いくちばしを当てて音を出した。
 
とりあえずアヒルの鳴き声が出るホイッスルらしいが・・・。
 
なんだ・・・。
なんだこれ・・・!
 
マヌケなのに・・・・かわいい・・・!!;
 
頭の中がぐらぐらする!
 
「ぐっ・・・////」
 
普段なら絶対言わない言葉が飛び出しそうで、俺は口の中で舌を噛んだ。
 
 
「こうガーー、どうしたグア~!
 
「ガーガー言わすな!!///
 ゴール行くぞ。」
 
分かっててやってるのか!?
 
顔が熱くなるのを感じながら、極力カオルを見ないように心掛けた。
 
ただでさえ密着しているのに、なんなんだもう・・・!
 
 
≪ガロペアゴールイン~~!!☆≫
 
 
ゴールテープを切った途端、日向のアナウンスが入る。
 
 
ガ~~、頑張ったけど2位だったグア、鋼ガ~~・・・」
 
《なんて醜態だ・・・ガロともあろうものが・・・が~~。》
 
「黙ってろザルバ。
カオル・・・とりあえずホイッスルを外せ・・!!;」
 
 
続いてゴールしたのは零&鈴ペアだったが、毛むくじゃらのイエティこと零は泣いていた。
 
「零!バナナ!バナナあげるからもう泣くな!」
 
ゴール後うな垂れる零に、鈴がバナナを差し出す。
 
「いらねぇよ!」
 
《ゼロ!可愛かったわよ;》
 
「慰めんな!シルヴァ!」
 
 
結局、スタートすらままならなかった翼・邪美ペアは失格。
 
険悪な雰囲気のまま終わりを迎えた翼だった。
 
 
 
――・・・・
 
 
「鋼牙様、カオル様!御二人は息がぴったりでしたな!」
 
出迎えたゴンザは満面の笑みだ。
 
そりゃそうだろう・・・。
自分の思惑が上手くいってるんだから・・・。
 
 
「そうかな~~?
 2位だったし・・・。
 あ、でもね!私いっつもビリだったから2位でも嬉しいんだ!」
 
そう言ったカオルは、本当に単純に運動会を楽しんでいる。
 
こんなに満足そうな笑顔が見れたんなら、連れてきて良かったな・・・。
 
 
「ようございましたね、カオル様。
 河童もとても可愛らしかったですよ~。
 鋼牙様もそう思われましたでしょう?」
 
「・・・・いや、まぁ。」
 
「ほんと!?
 良かったぁ~~、鋼牙ずっとそっぽ向いてるから酷いんだと思ってた!」
 
 
まぁ・・・お前はなにやっても可愛いよ。
 
とは言えるはずもなく。
 
 
正直に嬉しさを体言するカオルを見ていると照れくさくて、何となく零や翼に目をやる。
 
 
てっきり落ち込んでいる二人がいるかと思いきや、邪美となにやら小言で喋っていた。
 
それは決して深刻な様子ではなく、どこか面白おかしそうな・・・悪巧みをしているような雰囲気だ。
 
 
なんだ・・・?
 
 
首をかしげるが、俺が見ているのに気がついた邪美がひらひらと手を振った。
 
気にするな、といわんばかりに。
 
 
詮索は趣味じゃないし別に良いか、と俺はゴンザ達に向き直った。
 
 
 
――・・・
 
 
≪はい!では本日最後の種目!
 “借り物競争”を行いたいと思いま~~す!!≫
 
日向のアナウンスを聞いて、鈴が俺に話しかける。
 
「鋼牙!最後のだよ!」
 
「・・・やっとか・・。」
 
「頑張ってね!鋼牙!
 みんなで応援するから!
 もちろん零君、翼君も応援するね!」
 
カオルの声援に、零はまた軽口で返すかと思っていた。
 
しかし・・・。
 
「ありがと、カオルちゃん。
 でも俺達は最後のには出ないんだよ。」
 
「え?そうなの??」
 
「ああ、借り物競争に出るのは鋼牙と・・・ほか数人の騎士と法師だ。
 俺達は出ない。」
 
 
翼も零に続けるように説明した。
 
 
「そ!だから鋼牙!ぜったい一位とれよ!」
 
ボンと邪美が背中を押す。
 
「 ?・・ああ。」
 
 
何かの作意を感じながらも、俺はスタート地点に向かうことにした。
 
 
 
――・・・・
 
 
 
「よし・・・鋼牙が向かったよ。
 零、翼、仕込みは頼んだからね。」 
 
「オーケー!任せろ邪美の姉御!」
 
「司会は日向と暁だしな。きっと協力してくれる。」
 

邪美、零、翼の企みにカオルとゴンザそして鈴は不思議に思う。

 
「えっ?なになに??」
 
「何か仕掛けるのですか??」
 
「鈴にも教えてーー!」
 
 
邪美は唇で美しい弧を描き、微笑んで答えた。
 
「ふふふ・・。
 鋼牙の“借りてくるもの”の指示を物じゃなくて“大好きな人”って紙に差し替えるのさ。」
 
 
えっ・・・それって・・・。
 
カオルは驚いて言葉をなくす。
 
 
「それは名案ですな!」
 
《この手なら、あのカタブツも素直になるでしょう。
 いいこと思いつくじゃないの。》
 
零の手甲からシルヴァも賛同を示した。
 
 
「じゃ、行ってくるよ~~!」
 
零と翼が作戦遂行に向かうのを、カオルは一人複雑な面持ちで見送る。
 
 
そんな彼女の肩を邪美が叩く。
 

「なんだい、しょげた顔して。
 心配しなくても、アイツがゴールまでつれていくのはあんた以外にないよ。」
 
「・・・・あ・・・・う、うん・・・。」
 
 
「・・・?」
 
さっきとは違い元気のないカオルに、邪美は首をかしげた。
 
 
≪さぁ~~皆さん、スタンバイしましたねー!
 さて最後の“借り物競争”のルールを説明したいと思います。
 まず第一ポイントにおいてある、封筒を開けてそこに書いてあるものを会場内から探し出しあるいは人から借りて、それを持ってゴールまで行ってください。≫
 
≪分かりましたかー?
 それでは、On your mark、Ready・・・・パン!
 
 
 
「お、始まった始まった!」
 
紙のすり替えを終えた零と翼がカオルたちのもとに戻ってきた。
 
「上手くできたのかい?」
 
「ああ、確実に遂行した!」
 
 
≪おお~~~!!
 さすがに足の速いガロです!
 トップです!!さぁ~~上手く“借り物”できるでしょうか!?≫
 
日向のアナウンスで、一同は競技の様子に見入る。
 
しかし、カオルだけは眉をしかめていた。
それに気がついたゴンザが、気遣わしげに尋ねる。
 
「カオル様、どうかなさいましたか?」
 
 
「ゴンザさん・・・私・・・。
 私・・・、鋼牙に呼んでほしいけど・・・そうなってほしくないって思ってる・・。」

 
「ど、どうして?;」
 
「分からないけど・・・、上手く・・・言えないんですけど・・・。」
 
答えたカオルは消え入りそうな声だった。
 
小さな声だったから、零や邪美・・・他の人には聞こえていない。
 
 
「お!鋼牙が封筒のところにたどり着いたぞ!」
 
零の楽しそうな声が辺りに響く。
 
「鋼牙がんばれ~~~!」
 
鈴も大きな声で声援を贈った。
 
 
封筒を開けて、中の文面を確認する鋼牙。
 
どういうわけか、鋼牙はじっと紙を見つめて思案しているようだ。
 

 
「・・・なにアイツ立ち止まってんだよ・・・;
 “借りる”のは一人しかいないだろ~~!」
 
焦れた零が呟く。
 
 
「ったく、恥ずかしがってるのかい・・鋼牙のヤツ・・・。」
 
邪美も舌打ちをした。
 
「鋼牙~~・・・?」
 
鈴も不安そうに眉をハの字にする。
 
 
≪これはどうしたのでしょうか!?
 ガロ、立ち止まっています!
 難しいお題だったのか~!?≫
 
日向も煽るが、鋼牙はそれでも微動だにしない。
 
鋼牙より遅れて封筒を手にした騎士や法師がぞくぞくとあらゆるものを借りてきている。
 
一人が我雷法師を担いで戻ってきても鋼牙は動かなかった。
 
 
 
ただ、決意を込めた瞳で真正面を見据えるだけ・・・。
 
 
その瞳の光を見た途端、カオルの顔に笑顔が戻る。
 
 
ー「鋼牙ぁーーー!!」
 
 
大きな声で鋼牙に向かって呼びかけた。
 
 
びっくりして零や邪美がカオルを見つめる。
 
 
「がんばってーーー!こうがぁーーー!!」
 
状況は思わぬ方向に転んでいるのに、ただ一人カオルだけは嬉しそうだ。
 
 
一同は訳がわからなくて、カオルと鋼牙を交互に見つめる。
 
カオルの声援を聞いた鋼牙は、誇らしい笑みを浮かべて応えた。
 
 
ひとり、またひとりとゴールしていく中、黄金騎士だけがトラックの中央で立っている。
 
観客はどよめき出した。
 
 
ついに、残すところ鋼牙ひとり・・・となった時、我雷法師が拡声器を使って語り始める。
 
 
≪冴島鋼牙殿、この“借り物競争”は棄権するのかな?≫
 
 
「違います。」
 
 
しん・・と会場は静まり返って鋼牙の声に耳を傾けた。
 
 
≪“違う”?
 では、なぜそなたはそこでただ立っているのだ?≫
 
 
「この借り物の指示には“大好きな人を”と書いてありました。
 俺は、この祭典には初めて参加したし、詳しいことは知らないけれど・・・。
 今日一日でひとつ、わかったことがあります。」
 
 
≪それは何か教えてくれるかな?≫
 
 
「今日、ここで多くの人たちと知り合う機会がありました。
 列を誘導してくれた騎士見習いの人物には、俺は初めて会ったし、救護を担当している魔戒法師の人、
 それに採点する人、物を準備する人、応援してくれる人。
 多くの騎士と法師。
 一緒に、この場を盛り上げよう・・・そして祭典を成功させようとしている多くの者達。
 
 俺の愛する人が笑顔になっているのを見て、気付いたのです。
 
 物事はひとりでは成り立たない。
 人はひとりでは成り立たない。」
 
 

「俺の“大好きな人”は・・・ たくさんいるんです。
 
 その人達全員を通すには、このゴールは狭すぎます。」
 
 
 
 
 
 
≪はっはっはっは!!
 こんなことを!!
 本気で言い切るものがいるとはな・・・!!≫
 
 
 
「・・・興でしょう?」
 
 
≪まさしく!
 やはり、そなた只者ではない!≫
 
我雷法師は朗らかに笑いながら、拍手をした。
 
やがてそれは大きな拍手になっていく。
 
 
カオルが今日一番の笑顔を見せたのを、零や邪美は複雑な面持ちで眺めた。
 
 
 
「・・・・敵わないよなぁ、ガロには。」
 
「あんなくさい台詞で・・・よくもまぁ、まとめられるよな・・・。
 ま、そうは言っても・・・私も気分良いけどね。」
 
 
参ったよ・・・と邪美は笑う。
 
 
 
 
 
―――・・・・
 
 
 
運動会が終わり、昼間の喧騒も遠のいた夜。
 
小さな焚き火の前で、鋼牙とカオルは座り込んだ。
 
翼の家では、零や邪美も一緒に酒を酌み交わしてドンちゃん騒ぎをしている。
 
賑やかな声が外まで届くのを、カオルと鋼牙は見詰め合って笑った。
 
 
「今日・・・邪美さんに招待状もらえて、運動会見れて・・・本当に楽しかった!」
 
「・・・良かったな。」
 
 
「でも驚いちゃった!
 まるで普段の鋼牙と違うんだもん。」
 
昼間のことを思い出して、カオルはにこにこと笑う。
 
 
「そうだな。
 俺もあんなことは初めてだ・・・。
 もう二度としない。」
 
「えーー?
 すっごくかっこよかったのに。」
 
 
「・・・たまにはいいもんだ、賑やかなのも。
 手持ち無沙汰になるっていうか、どうしていいかわからなくなるから、あんまり好きじゃなかったけど。
 お前が俺を、変えたから・・・。」
 
 
「私が?」
 
 
「ああ。
 大切なものに・・・気が付けるようになった。
 昼間、本当に思ったんだ。
 カオルや、零や邪美・・・翼に鈴、ゴンザ。
 見知らぬ騎士や法師たちがそれぞれ楽しんでいるのを見て・・・・。
 ああ、俺が守りたいのは、・・・こういうものなんだな・・・と。
 人間達の営み、・・・命を賭けても守るに値するものだ。」
 
 
そういった鋼牙の顔はとても穏やかで、カオルは見惚れてしまう。
 
「鋼牙・・・。」
 
 
「どこへ行こうと、俺のやることは変わらない。
 守りしものとして、戦う。」
 
鋼牙はまっすぐに炎を見つめた。
 
その瞳に迷いはなく、強い決意を感じる。
 
「うん、そうだね・・・。
 でもね、鋼牙。」
 
「 ? 」
 
 
「もう、鋼牙はひとりで戦ってるんじゃないんだよ!
 きっと鋼牙が思ってるように、零君や邪美さん・・他のみんなも鋼牙が困ってるなら、絶対助けてくれる・・・!
 どんなに離れてても。
 だから・・・!」
 
 
「分かっている・・・。」
 
分かってるよ・・・。
 
 
ゆっくりと、鋼牙がカオルの顔に影を作る。
 
近付く唇に、カオルはそっと瞼を閉じて待った。
 
 
あと3cmほどで重なる唇は、不意に止まる。
 
―「鋼牙―――!」
 
 
家の中から零の呼ぶ声が聞こえた。
 
鋼牙はカオルから体を離して、家に向かって答える。
 
「何だーー!」
 
カオルは突然の声かけにビックリして、心臓がドキドキした。
 
 
―「俺の酒に付き合え~~!!」
 
既に酔っ払っているであろう声に、カオルが噴出す。
 
「・・・まったく。
 カオル、一杯だけ付き合ったら家に帰ろう。
 ここじゃ、・・・・」
 
「キスもできない?」
 
くすりと笑って言葉を続けると、鋼牙は「ああ」と苛立ちを顕にして答えた。
 
 
「うふふ、怒らないであげて。
 皆、鋼牙が大好きなんだから。」
 
 
カオルは仏頂面を浮かべる鋼牙にちゅ、と素早く口付けると不敵に笑ってみせる。
 
 
 
「一番はわたしだけどね。」
 
 
それだけ告げると、カオルは鋼牙を置いて一足先に家の中へと入っていった。
 
 
 
ひとり取り残された鋼牙は焚き火に水をかけて、諦め混じりのため息をつく。
 
 
 
「・・・・。
・・・・ ・・・負けた!」
 
 
《・・・上には上がいたか。》
 
 
 
カチリ、とザルバはウインクした。
 
今なら北の番犬所の神官が言ったことも、分かるような気がした鋼牙だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
end
 
 

負けた!!(ノД`)・゜・。
 
一二三敗北宣言です、すいません!!;orz
もうなんなんだコレーーーー!!
 
何にも思いつかなくてノープランですいません!!
ちゃーみーママ様、素晴らしいお題をいただいたのにそれを生かしきれない一二三で申し訳ない!!泣
 
お許しください(´Д`|||) ドヨーン
 

拍手[26回]

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Comments
1周年おめでとうございます!
おはようございます。

久しぶりに時間があったので、朝踏みです。

一二三さん、サイト開設1周年おめでとうございます!!!

私が、初めてここに来たのは、去年10月末にファミ劇で牙狼を見てからでした。

映画→小説→キバ→新シリーズ決定と激動の1年でしたね☆

1年で65000hitって、すごくないですか?

そのうち少なくとも300回以上は私ですYO(日参欠かさず!!)

これからも、応援してます。

取り急ぎお祝いまで(出勤出勤…)
Posted by しゃーりぃ - 2011.09.12,Mon 08:31:47 / Edit
Re:1周年おめでとうございます!
しゃーりぃ様、ありがとうございます!!

返信遅くなりまして、大変失礼しました;
一周年お祝いのお言葉ありがとうございます!v

しゃーりぃ様には、開設まもなくからずっと応援を頂いていて、本当にありがたいことだなと思っています。
これからもよろしくお付き合い頂ければとっても嬉しいです!

日参、嬉しすぎますv
最近は更新スピードが落ちて、がっかりさせることも多いんじゃないかと反省してます;

これからも、頑張りますね!!

本当にありがとうございました!
Posted by - 2011.09.21 at 22:37
なな様、お優しいお言葉いたみいります。
ご感想&拍手、とっても助かりました~~!
本当に、自信のない作品ほどこうやってご感想いただけると、ありがたさが身にしみます。
今回もありがとうございました!

Posted by 一二三(管理人)です - 2011.10.01,Sat 18:54:01 / Edit
ちゃーみーママ様、本当にすみません!

拍手頂けると思っていませんでした・・・!!orz
すいません!;ありがとうございます!泣

はい、ちょっと奇をてらいすぎた感じで・・・w
前回もちゃんと書けなくて、今回こそは!と意気込んだ結果カラ回りしてしまった気がします。

>こんな運動会なら出たいですね。
この一言に大変救われました!

ちゃーみーママ様、こんな一二三ですいません;
これからもお付き合い頂ければ幸いです。

今月(?w)の区民運動会頑張って下さいね!!
Posted by 一二三(管理人)です - 2011.10.01,Sat 18:54:33 / Edit
うさみみ様、またのお越しありがとうございます!
拍手のお礼がいつも遅くてすみません!;
そうですね、重い話ばっかりでごめんなさい!
それもこれも一二三が根暗なせいです!!ww笑
たまにはただ鋼牙とカオルがイチャついてるものとか書きたいです;

久しぶりに楽しめる作品になってよかったですwほっw

またぜひ遊びに来てください!
Posted by 一二三(管理人)です - 2011.10.01,Sat 18:55:02 / Edit
みゆ様、またメッセージ頂けて嬉しいです。
拍手、本当にありがとうございました!
お返事遅くてすみません;

楽しんで頂けて何よりでした☆
Posted by 一二三(管理人)です - 2011.10.01,Sat 18:55:30 / Edit
風の道ですこやんです様、ありがとうございます!
拍手&メッセージ大変励みになります、ありがとうございます!
すっごく返信が遅くてごめんなさい!orz

笑って頂けたなら本当に嬉しいです。

おお!?(゚ω゚*)
>「ひふみんはこやんのものだけどな」

どっきん☆熱烈な告白ありがとうございました!v
あなたの一二三でーーす!!☆ヽ(*´Д`*)ノ←注※返品不可
Posted by 一二三(管理人)です - 2011.10.18,Tue 22:38:12 / Edit
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